クルーズ旅行にはまる日本人 働き方改革も追い風に

【経済インサイド】

 豪華客船などによる日本人のクルーズ人口が増加する中で、旅行各社がクルーズ関連事業の強化に乗り出している。大型のチャータークルーズを企画するほか、クルーズ専門の窓口であるサロンの新設などで、リピーターの着実な取り込みと同時に、これまでクルーズを経験していない層の取り込みを図る。

 富裕層向けのイメージが強かったクルーズだが、各社は日本の港湾発着ツアーを増やすと同時にカジュアルさも訴求し、クルーズ人口のさらなる拡大を目指す考えだ。今後は、欧米のワーク・ライフ・バランスのように、仕事と休みを両立させる日本の働き方改革が「追い風」になるとの見方もある。

 JTBは今年4月から7月までの日程で、豪華外国客船「サン・プリンセス」による世界一周のチャータークルーズを実施した。JTBが船内のサービスを手掛けており、日本語での対応や和食の提供に力を入れた。通常なら300万円程度からとされる価格を188万円からと、3~4割安く設定したのが好評だった。

 エイチ・アイ・エス(HIS)は、来年のゴールデンウイークに過去最大のクルーズを実施する。今年3月に新造となったばかりのMSCグループ保有の超大型客船「MSCベリッシマ」を活用する。17万トン級で、乗客定員が5686人と、日本に寄港するクルーズ船としては過去最大になる。9日間の日程で、横浜港を出航し、宮古島、台湾など4カ所に寄港する。旅行代金は15万8000円からとしたほか、13歳未満は無料とするなど、三世代家族での利用などを意識した取り組みだ。

 阪急交通社は、大坂・梅田に続いて、東京・新橋にクルーズの専門サロンを開設した。松田誠司社長は「クルーズは一般旅行よりも専門的な知識が必要」と顧客対応を強化した理由を説明する。同社のクルーズ事業の売上高は、昨年に約100億円に達したが、今年は2割増の120億円にまで拡大させる方針で、これからの成長事業とみる。

 日本人のクルーズ人口はじわりと増えている。国土交通省によれば、昨年の日本人のクルーズ人口は、前年比1・8%増の32万1000人と過去最高となったが、さらに拡大が見込まれている。

 理由の一つは、クルーズで世界をリードしている欧米の客船大手が、クルーズ船の日本寄港を増やしていることだ。

 クルーズといえば、欧州や米国まで航空機で現地に向かい、そこから乗船し、一定期間のクルーズを楽しむという「フライ&クルーズ」が一般的だ。海外への往復航空料金がかかるため、欧州などでは、10日間程度のクルーズでも50万円以上となるケースがほとんど。さらに、現地の空港からクルーズの発着港への移動なども必要で、旅慣れたリピーターでなくては楽しめなかったというのが実情だ。

 それに対し、日本寄港なら海外航空料金は不要で、東京や横浜、神戸といったアクセスのよい港から出港できる手軽さと、価格面でも1泊1万円程度のツアーもあり、通常の国内や近隣国旅行と比べても割安といえる。

 英大手のキュナード・ラインのマッド・クリーブス副社長は「日本は核となる市場になる」と語る。同社は、昨年は1回7泊分だった主力の「クイーン・エリザベス」の日本周遊を今年は2回16泊分、来年は7回61泊分と大幅に増やす方針だ。米大手のプリンセス・クルーズも日本人スタッフを拡充するなど、日本向けの強化を打ち出している。

 一方で、日本勢も商機を逃さない。日本郵船は、日本船籍最大の大型クルーズ船「飛鳥II」を来年、大規模改修する計画を発表。環境規制に対応する排ガス脱硫装置「スクラバー」の搭載なども目的だが、この改修で和風の露天風呂を新設するなど、リクライゼーションを前面に打ち出す。商船三井も、「にっぽん丸」を改装する計画だ。

 大手旅行会社の幹部は「日本では半年以上先の長期休暇や旅行を計画するというのは難しく、世界では1年前の予約が当たり前のクルーズはなじまなかった。しかし、働き方改革で休みの重要性も認識され始めており、長期休暇の予定が立てやすくなっている。このことがクルーズ需要の拡大に一役買うだろう」と期待を寄せている。(経済本部 平尾孝)

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