進化続けるノンアルビール 好みに対応、ファン開拓へ

【経済インサイド】

 ビールのうまい季節がやってきた。飲めない時に助かるのが、ノンアルコールビール。近年は健康志向の高まりもあり、脂肪の吸収を抑えるなど特定の機能を持った機能性表示食品も登場するなど、もはや「ビール」をうたわなくてもよいのではないかと疑問すら抱く状況だ。メーカー側には、好みの多様化に対応した「ビール離れ対策」の思惑もある。

 「パッと目に入る、直接的な表現を追求しました」。サントリービールが7月に発売したノンアルビール、「からだを想(おも)うオールフリー」について、開発担当者は従来商品との表示の違いを強調する。

 消費者の目に入りやすいよう、缶正面の上部に「内臓脂肪を減らす」と、太字で記載。内臓脂肪を減少させる効果があるという、ローズヒップに含まれるポリフェノールの一つ、ティリロサイドを配合した。ビールらしい飲み応えと苦みも強化した。

 これまで多くのノンアルビールは、アルコールやカロリー、糖類などが「ゼロ」であることを前面に出していた。それが機能性表示食品として、「追加の健康維持・増進の効果」を訴求する、新たな段階に入ったといえる。

 サントリーは、ノンアルビールの「オールフリー」を平成22年に発売。同ブランドの昨年の販売実績は計686万ケース(1ケースは大瓶20本換算)だった。今年は、今回の新商品60万ケースを含む計710万ケースの販売を計画している。

 ノンアルビールは、キリンビールが10年前の21年、業界で初めてアルコール度数0・00%のビールを発売し、飲酒運転による交通事故が問題となる中、ヒット商品となった。ビール類市場の減少が続く中、ノンアルビール市場は拡大が続き、サントリーによると、今年は10年前の約4倍に相当する約2000万ケース規模にまで成長する見込みだ。

 ビール大手幹部は、ノンアルビール市場が3段階で変遷してきたと解説する。最初は運転などで飲みたいけれど飲めない人たちの「我慢市場」。その後は、好きだが健康を気遣い飲まない「休肝日市場」、そして、少し高価な炭酸飲料としてお母さんたちが会合で飲む「集会市場」と、需要を拡大してきたという。現在の変化が「機能性市場」の開拓だ。

 サッポロビールは27年5月、業界初となる特定保健用食品(トクホ)のノンアルビール「サッポロ プラス」を発売した。食物繊維により糖の吸収を穏やかにする。

 ただ、トクホは健康の維持増進に役立つ科学的根拠や効果について国が審査するため、時間や手間がかかる。そこで、各社が目を向けたのが、事業者の責任において商品情報を消費者に表示できるよう、27年に制度が始まった機能性表示食品だ。

 消費者庁の機能性表示食品の届け出情報によると、サッポロは「尿酸値を下げる」機能をうたったノンアルビール「うまみ搾り」を申請中。含まれるプリン体が尿酸値を上げて通風の原因になるとビールが敬遠される状況を逆手にとった。

 また、キリンは熟成ホップエキスに体脂肪低減効果を確認した自社の研究技術を生かし、「お腹(なか)まわりの脂肪を減らす」機能をうたった「カラダFREE」を申請中で、「年内の発売を目指す」(広報)という。

 10月の消費税増税では、酒類であるビールは10%に税率が上がるが、炭酸飲料扱いのノンアルビールは軽減税率対象で8%と、値頃感もアピールポイントだ。

 アサヒビールは、ノンアルビールの「アサヒ ドライゼロ」を7~8月、前年実績比1割増産中。ノンアルビールの飲用者は、25%がビール類、18%はチューハイやカクテルなどを併飲していることが判明。普段はビールを飲まない若い世代などにも、飲み過ぎ防止の「次の一杯」にノンアルビールを選択してもらい、ビールファンの開拓につなげる狙いだ。(経済本部 吉村英輝)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ