MRJ改めスペースジェット、改名機に離陸できるか

【経済インサイド】

 国産初のジェット旅客機を開発する三菱重工業傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)が、反転攻勢に出ようとしている。名称を「三菱リージョナルジェット(MRJ)」から「三菱スペースジェット」に変更。開発が大詰めを迎えている90席級の機材に続いて、70席級を製品化する方針を打ち出した。開発の遅れでネガティブなニュースが先行してきただけに、2020年半ばに予定する初号機納入開始に向け心機一転といきたいところだが…。

 「変化を求める市場へのわれわれの答えだ」

 6月17日にフランス・パリ郊外のルブルジェ空港で開幕した世界最大の航空見本市「パリ国際航空ショー」。初日に会見した三菱航空機の水谷久和社長は、世界各国のメディアに英語でそう強調した。

 同社はこの日、機材の座席数が90席級の「M90」に加えて、23年の納入開始を目指し65~76席の「M100」を開発すると正式表明した。航空会社とパイロット組合の労使協定に盛り込まれた条項(スコープ・クローズ)で、地域航空会社の機材が76席以下に制限されている米国をより意識したモデルだ。

 パリショーでは新デザインのM90を初めて披露。真っ赤な尾翼には、枯れ山水の石庭を思わせるもようを施した。さらにその近くでは、M100の実機サイズの内部模型も公開された。

 米国は航空機市場の規模が圧倒的に大きい。しかも70席級より下のクラスは古いモデルしか存在せず、ライバルのエンブラエル(ブラジル)やボンバルディア(カナダ)は新モデルを開発していない。70席級が加われば、スペースジェットが需要を総取りできる可能性が高い。

 ちなみに新名称の「スペース」は、宇宙ではなく空間の意味。名称変更には、広々とした客室や荷物スペースをアピールする狙いがあるという。70席級なのにM100とまぎわらしいのは、機種が加わるごとに数字を増やす業界の慣例に従ったためだ。

 パリショーでは朗報も飛び込んだ。ある北米の顧客と、売買契約に向けた協議を始める内容の覚書を締結したのだ。正式契約を結べば、M100を15機納めることになるという。

 スペースジェットは08年に開発が開始され、当初は13年の初号機納入を目指していた。しかし経験不足がたたり、これまで5度も納入を延期。1500機程度といわれる採算ラインに対し、オプションや顧客から発注の意思を示されている20機を含めても受注は407機にとどまり、特にここ3年はゼロが続く。

 同社によると、覚書の話はパリショーの場でとんとん拍子にまとまったのだという。正式契約はまだ先とはいえ、本格的な商談に入るのは久しぶりとあって、朝のミーティングで水谷社長がそれを報告すると社員から歓声がわいた。

 さらに6月25日には、親会社の三菱重工業がボンバルディアの小型機事業を買収することも決まった。債務引き受けを含む買収額は7億9000万ドル(約850億円)にのぼるが、新規参入組の弱点であるメンテナンスなどの顧客サポートを拡充できるとみており、三菱重工の泉沢清次社長は「将来の成功に資する一手だ」と意義を強調する。

 もっとも、本当の勝負はこれからだ。

 3月、国土交通省のパイロットが操縦して安全性を審査する飛行試験が米国で始まった。国の認証「型式証明」取得への最後の関門で、5度納期を延期した開発はヤマ場を迎えている。

 スペースジェットの開発費は、すでに7000億円規模まで膨らんでいるとみられる。開発が遅れるほど採算ラインが上がるほか、受注をキャンセルされる可能性も高まるだけに、これ以上の遅れは許されない。

 しかも三菱航空機の関係者によると、米国ではパイロット組合の力が強まっており、スコープ・クローズは当面維持される可能性が高いという。そうなるとM100の人気が高まり、M90を発注済みの米系航空会社が変更を求めてくる可能性がある。(経済本部 井田通人)

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