中韓と競うEV電池、トヨタ主導許すパナソニックの懐事情

 【ビジネスの裏側】

 パナソニックが、トヨタ自動車など他社との協業推進を経営の柱の1つに据えた。今年に入り、車載電池、住宅、監視カメラといった主要事業で立て続けに共同出資会社の設立を決めた。ソニーや日立製作所といったライバル企業が好業績をたたき出す中、パナソニックは家電事業の不振などで業績が伸び悩んでおり、単独で成長が見込めない事業を再構築する必要に迫られている。他社の資金力や技術力に頼る戦略で、再び成長軌道を描くことができるのだろうか。(林佳代子)

 単独成長「限界だ」

 「これまで自社のリソース(経営資源)を中心に成長戦略を進めてきたが、収益が伴わなかった。自社だけで成長するのは限界だ」

 パナソニックの津賀一宏社長は5月9日、東京都内で令和元年~3年度の新たな中期経営計画を発表した席上、他社との提携の必要性を強く訴えた。

 この数時間前、パナソニックはトヨタとともに、両社の住宅関連事業を統合すると発表した。来年1月に新会社を設立し、両社の子会社など5社を移管する。少子高齢化で国内の住宅市場が縮小する中、今後は住宅販売以外に都市開発事業なども拡大して競争力を高める考えだ。

 パナソニックとトヨタは今年1月にも、中国・韓国勢との開発競争が過熱する電気自動車(EV)向けの「角形」電池を共同生産する新会社設立で合意した。両社の協業分野は自動車から住宅にまで広がった。

 ただ、2つの協業はスキームが異なる。住宅の新会社は両社の出資比率が同率なのに対し、電池の新会社はトヨタ51%、パナソニック49%となる見込みだ。パナソニックは車載電池市場の世界シェアで上位だが、新会社はトヨタが主導し、設備投資などの資金面もトヨタがパナソニックをサポートする構図となる。

 パナソニックは5月31日にも、国内シェア首位、世界シェア4位の監視カメラ事業で、投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ(東京)と新会社設立を発表した。

 監視カメラも車載電池と同様、80%を出資するポラリス側に主導権を渡すことになるが、パナソニック関係者は「出資比率を気にして将来に向けた手を打てないことの方が問題。ファンドの資金力を借りるのは正解だと思う」と評価する。

 研究開発に巨額費用

 車載電池と監視カメラのいずれも、研究開発に巨額の費用がかさむが、将来の市場拡大を期待できる有望な事業だ。単独で事業を伸ばして市場シェアを拡大した方が、より大きな利益を稼ぐことができる。にもかかわらず、パナソニックが他社に主導権を譲ってまで提携に踏み切る背景には、差し迫った懐事情がある。

 同社の平成31年3月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が4114億円で前期から8・1%増えたものの、不動産売却益などの一時的な要因がなければ実質的には減益だった。「家電」「自動車・産業部品」「住宅関連」「法人向け事業」の4つの事業部門別の営業利益は軒並み前期を割り込んだ。

 同社の28年~30年度の中期経営計画は、家電事業で利益を稼ぎ、主に車載事業に再投資して新たな収益源を伸ばす成長シナリオを描いていた。しかし、世界的に販売を強化してきた冷蔵庫などの白物家電は、他社との価格競争に陥るなどして苦戦。車載事業も、米EV大手のテスラと共同建設した「円筒形」電池工場の生産拡大にてこずり、追加費用が生じて利益貢献が遅れた。結局、中計で掲げた営業利益4500億円の目標は達成できなかった。

 しかも、同社の有利子負債は現在、約1兆円に膨らんでいる。連結売上高が8兆円規模でも、「あらゆる事業に手広く投資できる体力は乏しい」(同社幹部)のが実情だ。

 過去に事業再生成功

 パナソニックは令和元年~3年度の新中計で、1千億円規模のコスト削減や、成長が難しい事業のテコ入れ策を打ち出した。具体的には、収益に陰りが見える家電事業と住宅事業は、他社との連携によって競争力を高める「共創事業」に設定。車載事業は、収益改善が必要な「再挑戦事業」とした。一方、法人向け事業は成長が期待できる「基幹事業」に位置づけ、経営資源を集中させる方針だ。

 同社は過去に、外部との資本提携で事業を再生した成功体験がある。子会社だったパナソニックヘルスケア(現PHC)が平成26年、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の傘下に入った例だ。ヘルスケア社は投資を振り向ける余裕がなかったパナソニックからの独立後に利益を拡大。28年には独化学大手バイエルの血糖値測定器事業の買収にこぎつけた。

 津賀社長は「私が社長になってからさまざまな事業を撤退し、従業員はつらい思いをしてきた。協業などの形で事業の競争力が高まれば、せっかくの技術力を失うこともない」と話す。

 令和2年3月期の連結業績予想で3期ぶりの減収減益を見込むパナソニック。かつてグループ力をテコに事業領域を拡大させてきた関西の電機の雄は、名より実を取る協業路線で復活を目指す。

 国内の電機各社は、2008年9月のリーマン・ショックによる景気低迷で存亡の危機に直面した後、「総合電機メーカー」からの脱却を図ってきた。ソニーは「VAIO(バイオ)」ブランドのパソコン事業を売却するなど不採算事業を整理し、日立製作所もグループの大規模な再編を推進。平成31年3月期連結決算では、ソニーと日立がそろって過去最高の営業利益を更新し、復活を印象づけた。

 パナソニックはソニーと日立に対し、本業の稼ぐ力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)で水をあけられている。31年3月期はソニーの約10%、日立の約8%に対し、パナソニックは約5%。株式市場では、パナソニックに稼ぐ力の向上を求める圧力が強まっている。

 とはいえ、韓国サムスン電子は、半導体の販売不振で業績が悪化したにもかかわらず約11%(2019年1~3月期)を確保し、ソニーや日立よりも高い。人口減少で日本国内市場の縮小が避けられない中、電機各社はビジネスモデルのさらなる転換が共通課題となっている。

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