業界の常識「造れば売れる」から…揺らぎ始めたタワマンの“価値観”

マンション業界の秘密

 タワーマンション(タワマン)が一気に増え始めたのは1997年の建築基準法改正以降だと言われている。したがって、竣工は2000年以降が多い。

 その頃から今まで、タワマンは「造れば売れる」というのが業界の常識だった。だから、デベロッパーは開発できそうな用地を意欲的に獲得してきた。

 ◆住形態に疑念

 タワマンは行政サイドのさまざまな許認可を必要とする。湾岸の埋め立て地のような場所だと、周辺に地域住民がほとんどいないので建設への許認可も下りやすい。

 しかし、すでに市街化されて何十年も前から人が暮らしている場所では、周辺の住民が反対するケースが多い。そういう場合でも、行政は「業者寄り」と思われても仕方のないような対応で建設を認可してきた。

 ところが、ここ数年でタワマンという住形態自体を懐疑的に捉える見方が広がってきた。

 2017年6月、イギリス・ロンドンの27階建てタワマンで火災が発生。死者・行方不明者が70人を超えた。日本のテレビもニュース映像を流したので覚えている方も多いだろう。

 この報道を見た一部の人々は、ロンドンのタワマンが主に低所得者向けの住宅であることに気付いた。イギリスも含めて、欧米人は超高層の建築物を必要悪と捉える風潮があるという。

 ただ、米国のトランプ大統領を例にとると、瀟洒なホワイトハウスより、ニューヨークにあるトランプタワーのペントハウスにいることを好むと伝えられている。

 トランプタワーと言えば、ギンギラに派手な意匠を施した「成り金タワー」というイメージがある。自分たちの大統領が、そういった場所を好むことに、米国の上層階級では眉をひそめる人たちもいるようだ。

 ◆子育てには…

 私は「限界のタワーマンション」という著作を集英社から刊行した。タワマンという住形態をこれまでとは違った視点で見直してみようという発想を基本に原稿を書き進めた。

 小規模ながらヨーロッパ人に対してアンケートも行った。その結果、半分近くの人は、タワマン的住まいに「一時的には住んでもいい」と考えているが、9割の人はそこでの「子育ては避けたい」と考えていることが分かった。そのあたり、日本人とはかなり感覚が異なる。

 拙著の中では、タワマンでの子育ては、学力の伸びや近視予防に悪影響があるという専門家の考察も紹介している。これまでにタワマンを無抵抗に受け入れてきたが、そろそろ立ち止まって見直す時期だとも言える。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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