丸亀製麺が始めた「30分飲み放題」 何が見えてきたのか

 ずるずるずるずるずる--。

 ランチタイム。讃岐うどん専門店「丸亀製麺」(運営:トリドールホールディングス)の店内をのぞくと、たくさんの人がうどんを食べている。「かけうどん」(並)を290円(税込、以下同)で食べることができるので、「お昼ごはんに」「ちょっと小腹がすいたので」といった感じで、店にフラリと立ち寄ったことがある人もいるのでは。

 ただ、夜になると、店内の様子はちょっと違う。空席が目立つのだ。このままではいけないということで、夜メニューなどを投入したものの、結果はいまひとつ。このままではやっぱりいけないということで、「30分飲み放題」を投入したところ、夜の売り上げが3割ほど伸びているそうだ。

丸亀製麺の「30分飲み放題」が好調

丸亀製麺の「30分飲み放題」が好調

 「30分飲み放題」は、2016年6月にスタート。都市部の店舗を中心に展開していて、12店で提供している(6月28日現在)。価格は1000~1300円で、うどんか親子とじのどちらかに加え、総菜を2品選ぶことができる。飲料はビール、ハイボール、レモンチューハイ、焼酎を用意していて、時間内であれば注ぎに行ける(店舗によって、フードや飲料の内容が違う)。つまり、最後の1杯はゆっくり楽しみ、長く滞在することもできるのだ。

 売り上げが好調なのは、飲み放題だけでない。17年3月に一部の店舗でお弁当を販売したところ、1日に100食ほど売る店も出てきたという。それにしても、なぜ丸亀製麺はうどん以外のモノにチカラを入れているのか。また、どうやってお客の“胃袋”をつかむことができたのか。飲み放題やお弁当を担当している、同社の田中誠治さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

のり弁当

のり弁当

 「飲み放題」を始めたきっかけ

 土肥: 居酒屋などの飲み放題といえば、「2時間」とか「3時間」が多いですよね。にもかかわらず、丸亀製麺は「30分」に設定しました。客は1000円を払えば、うどんか卵とじをチョイスして、総菜を2品選ぶことができる。また、ビールやハイボールなども楽しめるので、懐が寒いサラリーマンにとってはものすごくうれしい。そもそもどういったきっかけで、このようなサービスを始めようと思ったのですか?

夜の集客対策として、飲み放題をスタート

夜の集客対策として、飲み放題をスタート

 田中: 丸亀製麺を一度でもご利用いただければ想像できると思うのですが、昼はお客さんが多い。うどんを購入したいただくために行列ができることも珍しくないのですが、その一方で夜はどうか。空席が目立っているんですよね。お客さんの数は「昼8割、夜2割」といった店も多い。

 なんとか夜もお客さんを増やすことができないか。こうした課題をずっと抱えていまして、これまでさまざまなことに取り組んできました。例えば、夜専用メニューとして、「鍋焼きうどん」(640円)を用意しました。注文をしていただくと、目の前にカセットコンロを設置して、その上に土鍋を置く。煮立ったら召し上がることができるのですが、売れ行きはいまひとつでして。その後、終売になりました。

 じゃあ、お酒を提供してみてはどうかということで、缶ビールを用意しました。しかし、これも支持されずでして。いろいろ試してみるものの、なかなかうまくいかない。そうした中で、お客さんに「驚き」を感じられるものは何かを考えました。他の飲食チェーンで「ちょい飲み」が流行っていたこともあって、丸亀製麺でも飲み放題を提供してみてはどうかといった話になったんですよね。

 飲み放題の時間を「2時間」「3時間」に設定すると、店内がにぎやかになりますよね。そうすると、「うどん」を食べに来られたお客さんに迷惑がかかるかもしれない。そうした事態は避けなければいけないので、社内から「30分はどうか。そのくらいの時間であれば、他のお客さんにご迷惑はかからないのでは」といった意見がありました。そんなこんなで、実証実験の一環として、「30分飲み放題」を始めました。

 低空飛行が続く

 土肥: 16年6月、JR新宿駅から徒歩8分ほどのところにある「新宿文化クイントビル店」で、飲み放題を始めました。当初、どのような反響がありましたか?

 田中: 全国的にスタートしたわけではなく、まずは1店舗からスタートしました。「30分飲み放題」はニーズがあるのかないのかよく分からなかったので、とりあえずやってみることに。当時の私は「新宿文化クイントビル店」で店長を務めていまして、お客さんはどのくらい来られるのかとても楽しみにしていました。しかし、悲しいくらいダメでして……1日5~6人でした(涙)。

 いま振り返ってみると、仕方がなかったかもしれません。実証実験だったので、大々的にPRすることはできません。マスコミにリリースも出していなくて、やったことといえば店の外に看板を掲げたことくらい。「丸亀製麺でお酒を飲める」という情報がほとんどなかったので、利用者が1日5~6人といった状況は3~4カ月ほど続きました。

飲み放題サービスを始めたものの、当初はかなり苦戦した

飲み放題サービスを始めたものの、当初はかなり苦戦した

 土肥: うわっ、そんなに長い間、よく我慢しましたね。

 田中: 「セットの構成が悪いのではないか?」と考え、総菜の種類を増やしたり、減らしたり。次に「メニューが悪いのではないか?」と考え、主菜を中華にしたり、和食にしたり。で、結果はどうだったのか? ダメ。いろいろ工夫したものの、認知が広まらず、お客さんの数は増えませんでした。

 土肥: ロケットスタートとはいかず、低空飛行が続いたようですが、いつごろどのようにして上昇したのでしょうか?

 田中: 店はJR新宿駅から徒歩8分ほどのところにあるので、立地は悪くない。ただ、競合店も多いので、少し足を伸ばせば居酒屋はたくさんある。いわば素通りされるような形だったのですが、ある日、メディアが取り上げてくれました。そうすると、利用客は一気に100人ほどになりました。その後、徐々に落ち着いていきまして、現在は1日平均30人ほどですね。

 土肥: どんな時間帯に、どんなお客さんが来られるのですか?

 田中: 午後7~8時に来店される方が多いです。30~50代のサラリーマンが多くて、残念ながら女性客は少ないですね。

親子丼

親子丼

 ところで採算は合うのか

 土肥: 飲み放題が好調な店は、どこですか?

 田中: JR浜松町駅から徒歩3分ほどのところにある「ハマサイト店」ですね。1日50人ほどのお客さんが利用されています。他の店は価格を1000円、1200円、1300円に設定して、それぞれに主菜を付けているのですが、ハマサイト店では主菜なし。総菜、天ぷら、おむすび、いなりの中から、3品選ぶことができて1000円、4品で1100円、5品で1200円といった形で提供しています。また、飲み物は、ビール、ハイボール、レモンチューハイだけで、焼酎は用意していません。

 ハマサイト店も以前は主菜を付けていたので、なくすときに「大丈夫かな。売り上げが減少するのでは?」と心配していたのですが、いまのところ影響は出ていません。先ほども申し上げましたが、このサービスは実証実験中ですので、主菜ありがいいのか、それともなしがいいのか、価格はこのままでいいのかなど、さまざまなことを検証して、今後どうすればいいのかを決めていかなければいけません。

 土肥: 素人の感想を言わせていただくと、30分飲み放題で1000円って、やっぱり「安い」と思うんですよね。この価格設定で、採算は合うのでしょうか?

 田中: 本音を言わせていただくと、苦しいですね(汗)。1人4~5杯を想定していまして、それ以上飲まれると、だんだん厳しい状況に追い込まれるといった感じです。

 土肥: 売り上げが伸び悩んだなど、何らかの事情で飲み放題をやめた店はあるのですか?

 田中: 残念ながら……2店あります。どちらもビルの中に店舗を構えているのですが、施設の関係上、営業時間が短いんです。午後7時30分とか8時に閉店しなければいけないので、「さあ、飲みに行こうか」といった時間帯に、店を閉じなければいけません。そうした状況なので、どうしても利用客が少なく、飲み放題のサービスをやめました。

 このほかに、フルサービスを始めたところもありました。テーブルの上にボタンを設置して、そのボタンを押すと、店のスタッフが注文を受け付けるといった形ですね。サイドメニューも飲み物も豊富にそろえました。

 土肥: うーん、でも、それって居酒屋ではないですか?

 田中: そーなんです。やはり本業で運営されているところには、なかなか勝つことは難しくて。結果を出すことができなかったので、フルサービスをやめて、飲み放題を始めました。

牛とじ丼

牛とじ丼

 お弁当、1日100食売れることも

 土肥: 夜対策として飲み放題を始めて、一定の結果を出すことができている。その一方で、お弁当の提供も始めていますよね。ランチタイムは行列ができる店がたくさんあるのに、なぜお弁当も販売することになったのですか?

 田中: 「うどんを食べたいなあ」と思われて、店に来られても行列ができている。昼休みの時間はあまりないので、あきらめて違う店に行かれる人も少なくないんですよね。いわゆる“ランチ難民”が目の前にいる中で、何かできることはないかと考えた結果、お弁当を販売することにしました。

 現在、東京23区内の9店で展開していまして、売り上げはまずまず。1日100食を超える店も出てきました。ちなみに、一番人気は「唐揚げ弁当」。店内で販売している唐揚げを詰めているのではなくて、お弁当用に鶏肉を揚げています。

唐揚げ弁当

唐揚げ弁当

 土肥: 価格を見ると、400~600円台。この価格であれば、採算は合いそうですね? (飲み放題と違って)

 田中: はい。利益などを考えると、お弁当は好調ですね。以前、おむすびを詰めたお弁当を販売したことがあるのですが、今回のような本格的なものは初めて。飲み放題と同じように、お弁当も実証実験のひとつとして展開しているので、どこまでお客さんに支持されるのか。その動きを見極めながら、今後のことを考えていかなければいけません。

 (終わり)

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