FB仮想通貨創設 金融秩序に動揺、各国が警戒感

 【ワシントン=塩原永久】米交流サイト大手フェイスブック(FB)が独自の暗号資産(仮想通貨)構想を発表し、波紋が広がっている。世界27億人の利用者を抱える同社だけに、独自通貨のサービスが浸透すれば既存の金融秩序を揺るがす可能性がある。米議会では、プラバイシー保護をめぐる批判を浴びた同社に構想中止を求める声が浮上。仮想通貨のルール整備が追いつかない中、各国当局も慎重姿勢をとり、実現のハードルは低くない。

 フェイスブックが18日公表した「リブラ」という名前の仮想通貨は、送金や買い物の決済をスマートフォンのアプリで手軽にできるようにする。来年前半の利用開始が目標だ。

 リブラはデータ改(かい)竄(ざん)が難しいとされる「ブロックチェーン」と呼ばれるIT技術を活用。スイスに運営団体を設置し、米クレジットカード大手のビザやマスターカード、米配車大手ウーバー・テクノロジーズなど27社が団体に加盟した。

 リブラでフェイスブックが目指すのは、金融サービスの主軸となってきた銀行を介さないお金の取引だ。

 「世界には基本的な金融サービスも受けられない人がいる。新興国では銀行口座がない人の割合が高い」

 同社はそう説明し、世界で17億人に上る口座を持たない人々に金融サービスを提供する社会的意義を強調した。新たな顧客の開拓もでき、交流サイトの広告に依存する収益構造の改善にもつなげる狙いだ。

 一方、仮想通貨は既存の金融インフラと異なる仕組みで取引され、巨大な利用者数を誇るフェイスブックが金融界の“縄張り”を侵食する動きには、銀行や規制当局の警戒感が強い。

 フェイスブックは昨年、約8700万人の利用者データが外部企業に流出した問題で不信を招いており、米議会ではリブラ構想への厳しい反応が相次いだ。

 下院金融委員会のウオーターズ委員長(民主党)は18日、「仮想通貨の開発停止に合意するようフェイスブックに要求する」との声明を発表。19日には上院銀行委員会も公聴会を7月中旬に開くとした。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も19日、仮想通貨は「利点もあるがリスクもある」と述べ、高い水準の規制クリアを求める意向を示した。

 「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社では、ネット通販アマゾン・コムが事業者向け融資を手がけるなど、金融分野を虎視眈(たん)々(たん)と狙う。中でも「フェイスブックが本命」(米マサチューセッツ工科大学のシュライアー氏)とされる。

 ただ、まだ詳細がはっきりしていない「不確実な計画」(米紙メディア)とも指摘されており、規制当局の「ゴーサイン」を得るまでには時間を要しそうだ。

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 仮想通貨 インターネット上で取引される財産的な価値を持つ電子データ。硬貨や紙幣などの実体はない。公的な発行主体や管理者は存在せず「ブロックチェーン(分散台帳)」という技術を使い、偽造などを予防している。金融庁は今年5月、国際的な動向を踏まえ法令上の名称を「暗号資産」に変更した。

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