NTT東がeスポーツ参入 社長直轄で異例のスピード事業化

 【経済インサイド】

 NTT東日本が、対戦型ゲームで競い合う「eスポーツ」事業に本格参入した。eスポーツ事業は、昨年6月に就任した井上福造社長(63)の“鶴の一声”でスタート。社内に隠れた有力人材がいたことも幸いし、異例のスピードで事業化を実現した。“井上社長の野望”とは-。井上氏とゲーム事業との意外な関係に迫る。

 インターネットも普及していなかった昭和や平成初期。少年時代を過ごした30~40代のゲーム好きなら誰もが経験したであろう。ゲームのクリアを目指して、学校などで友人らと攻略情報を交換した。裏技でも発見しようものなら、クラスのヒーローになれた。そんな少年たちの“必須アイテム”がゲームの攻略本だった。

 国民的人気ロールプレイングゲーム(RPG)「ファイナルファンタジー」をはじめ、スクウェア(現スクウェア・エニックス)のゲームの攻略本は、NTTの関連会社のNTT出版から発売されていた。IT関連の技術書など、どちらかというと“お堅い”イメージのあるNTT出版がなぜ攻略本を手がけたのか。

 この本の出版に大きく関わっていたのが、当時、NTT出版にいた井上氏で、「攻略本の出版は、当時の経営陣同士の個人的なつながりで始まった」と打ち明けた。こうした縁もあり、井上社長は「ファイナルファンタジー」シリーズを自らプレー。自他共に認めるゲーム好きであるという。

 NTT出版では、コナミの人気ゲームの「実況パワフルプロ野球」「メタルギアソリッド」なども手がけていた。平成20年前後に攻略本の出版を終了したことについて、井上氏は「出版部門の稼ぎ頭だった。もったいないことをした」と当時を振り返る。

 「eスポーツは成長領域になる。事業化を目指す」

 井上氏の社長就任直後の宣言に、役員・幹部は呆気にとられたが、井上氏には勝算があった。

 欧米を中心に、海外では高額な賞金ということもあり、eスポーツ人気は右肩上がり。その熱気はアジアにも広がりつつある。日本でも、日本eスポーツ連合(JeSU)が発足し、プロ制度の整備に伴い、大会規模も拡大している。第5世代(5G)移動通信システムの本格運用でも、eスポーツは有力コンテンツとして期待が高い。

 eスポーツでは通信の遅延は致命的。通信回線が大会運営のカギとなるだけに、全国に光回線網を張りめぐらすNTTグループにはうってつけだ。通信インフラやシステムを手今日するほか、設備の効率化などで空いた通信局舎のスペースをイベントに貸し出す構想でもある。

 今秋に開催される茨城国体では、eスポーツ選手権が行われる。その都道府県予選をはじめ、競技大会の運営などで、NTTグループで連携して全国展開する計画だ。

 「eスポーツの関連動画に社員が出ている」

 社長命令が出されてまもなく、こんな“社内通報”が井上氏にもたらされた。

 実は、この社員はカプコンの人気格闘ゲーム「ストリートファイター」の有名プレイヤーで、現在も東京・秋葉原などでゲーム大会を主催するほど、業界では知られた存在だった。ゲーマーであることを社内に公開していなかったが、たまたまeスポーツイベントに識者として参加していたのだった。

 こうしてつくられた社長直属のプロジェクトチームは連日、大会運営のシステム構築などを自治体に売り込むべく、全国各地を飛び回っている。「進捗(しんちょく)状況が直接社長に伝わる」とNTTグループの大組織の中にあって、異例のフットワークの軽さをみせる。今後は地方でのイベント開催など、地方創生にもつなげたい考えだ。(経済本部 高木克聡)

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