米中摩擦 新興国通貨に売り圧力 人民元は「7」の攻防

 米中の対立が深刻化する中、アジアの通貨が売り圧力にさらされている。投資家がリスクを嫌って、中国と経済的な結びつきが強い国・地域の通貨を手放す一方、比較的安全とされる米ドルや日本円の買い入れを進めているからだ。“震源地”の中国では通貨・人民元相場が「1ドル=7元」の節目に近づき、市場で警戒感が強まっている。

 アジア通貨の下落が鮮明になったのは5月上旬、トランプ米大統領がツイッターで対中関税引き上げを表明したことがきっかけだ。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置も加わると、それまで金融市場を支配していた米中貿易摩擦への楽観的な見方は吹き飛んだ。

 外国為替市場では、中国と経済的な結びつきの強いアジア通貨を売り、「安全通貨」とされるドルや円を買う動きが強まった。台湾元や韓国ウォンは2年4カ月ぶりの安値圏にある。

 エコノミストの豊島逸夫氏は「新興国は過去に積み上げたドル建て債務の返済期限も迎えている。通貨安により二重の苦しみを背負っている」と解説する。豊島氏によると、アジア通貨安を仕掛けているのは、短期の投機筋による「空売り」だ。特にインドネシアやシンガポール、マレーシアの通貨は流動性も高く狙われやすいという。

 そんな中、中国の人民元については「7元の節目を抜けるか」が注目される。中国人民銀行(中央銀行)は24日、人民元取引の対ドル基準値を1ドル=6・8993元に設定。12営業日ぶりに元高方向に切り上げたものの、心理的節目の「7」を目前に、元の先安感は根強い。

 香港メディア「香港01」(電子版)が「元安は米国による関税引き上げの影響を部分的に帳消しにできる」との見方を示すなど、市場では中国当局が輸出に有利な元安を容認しているとの見方もある。

 一方で、トランプ政権は昨年の元安局面でも中国側を牽(けん)制(せい)しており、さらなる元安の進行は貿易協議の新たな火種となる恐れがある。加えて「一番怖いのは、中国の資本流出が止まらなくなるケースだ」と三井住友DSアセットマネジメント香港の佐野鉄司氏が指摘するように、急激な元安は中国の金融市場を一気に不安定化させかねない。

 中国国営新華社通信によると、人民銀の劉国強副総裁は今月23日に「為替相場の変動に対し決して不案内ではない」と強調した。(米沢文、三塚聖平)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ