なぜアコムは、いまだに過払い金問題で消耗しているのか?

 過払い金返還損失を見積もるための計算方法

 さすがにここまで予測が外れるとは誰も想像できなかったのではないだろうか? どうやればそれほど外せるのかかえって興味がわく。

 引当金を見積もるための業界標準の計算方法は、以下の手順の通りだ。大雑把にいうと、過去のデータからどれくらい過払い金を返還することになるか計算するのだが、それをローン残高がある口座(正常口座等)とない口座(完済済み口座等)に分けて行うのがポイントだ。

 過払い金のある口座を、(1)残高がある口座と、(2)残高がない口座に区分する

 区分ごとに、A 口座数、B 返還実積率、C 平均返還額を求める。ただし、(1)は貸付金の完済までに発生する過払い金返還実績を、(2)は貸付金の完済以降に発生する過払い金返還実績をもとにBとCを算出する。

 区分ごとに、A B Cを掛け合わせる。

 区分ごとの見積額を合計する。

 ※(参考資料・業種別委員会実務指針第37号 消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い 日本公認会計士協会 2006/10/13 改正2012/5/15)

 この計算の最大の問題は、ローン残高がある口座については、完済までの過払い金返還だけを見積もる点である(手順2)。ややこしい話に聞こえるかもしれないが、要するに完済したからといって過払い金の問題は終わるわけではない。それどころか完済して時間がたつほど利息に利息がついて雪だるま式に過払い金が増えるという、貸し手にとってはトンでもない、借り手にとっては美味しい仕組みになっているわけだ(詳細は後述)。図でいえば、黄色部分の過払い金返還は見積もられるが、グレー部分は全額抜け落ちてしまうのだ。

過払い金返還損失を見積もるための計算方法

過払い金返還損失を見積もるための計算方法

 実際、返済中の揉め事を望まず、きちんと完済してから返還請求する債務者は少なくない。この人たちが丸々抜け落ちているのだから、予測が当たらなくて当たり前だろう。

 なぜまだ過払い金問題で消耗しているの?

 アコムがいまでも過払い金返還費用に苦しめられるのは、早い段階に十分な備えができなかったせいだ。

 過払い金の返還請求を行うことが可能な期間は、過払い金のあるローンの最後の取引から10年間だ(条件次第では時効がさらに延長される)。適正な金利に条件変更された時点からではなく、ローンの完済から10年である。これがいったい何を意味するかというと、返還請求のタイミングで、受けとる過払い金が増減する、ということだ。

 過払い金返還を請求する権利を持っている人がいたとして、いつ請求を行うのが正解だろうか? いますぐ? 全額返済した直後? それとも時効ギリギリ?

 絶対にこうすべきという答えはないが、請求金額を最大化しようと考えた場合、「時効ギリギリ」が最良の選択肢となるケースがある。なぜなら過払い金には利息がつくからだ。当然、請求可能額は、月日の経過とともに徐々に増加する。

 過払い金への利息に適用される利率は、民法の法定利率である5%だ(2020年4月以降の法定利率は3%)。

 仮に過払い金が100万円あったとすると、年に5万円ずつ請求可能額が増える。過払い金返還請求のタイミングを待つ間を一種の投資と考えると、現在の低金利環境ではあり得ない高利回りの投資商品といえるかもしれない。

 時効までの期間が完済後10年と長いうえ、請求を遅らせた方が返還額を増やせる事情があるのだ。問題が長期化するのも当然だ。

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