外国人の口座売買防げ 地銀が管理厳格化

 【経済インサイド】 

 地方銀行が外国人労働者の預金口座管理の厳格化に取り組んでいる。在留期限の過ぎた技能実習生や外国人留学生の帰国時などに、口座を解約せずインターネットなどで不正に売却するケースが後を絶たず、所在不明になった場合は強制解約も辞さない構えだ。マネーロンダリング(資金洗浄)や特殊詐欺などの温床にもなっており、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法の施行で対策が喫緊の課題となる。

 強制解約の同意

 「帰国する時に転売され“オレオレ詐欺”に使われることもある。取引先企業で働いているなら、勤務実態もきちんと確認する」

 千葉興業銀行(千葉市)の担当者はこう指摘する。

 同行は3月から外国人が口座を開設する時に在留期間満了日の「届出書兼同意書」の提出を求めている。名前や住所、在留期限、勤務地・留学先を明記してもらうほか、期間満了時に所在が分からない場合は勤務地・留学先へ照会した上で取引停止や強制解約の可能性もあると指摘している。

 1月から同様の取り組みを始めた横浜銀行(横浜市)でも、在留期間の満了日や特別永住者証明書の有効期間が過ぎても更新を届け出ない場合は、強制解約を含む「取引制限」に異議を申し立てないとの同意を口座開設時に取り付ける。

 日本は国際組織「金融活動作業部会」(FATF)による資金洗浄対策に関する審査を秋に控えており、対応が金融業界共通の重要な課題になっている。地銀各行が対策を進めるのは、金融庁が昨年2月、対策強化を求めるガイドラインを出したのを受けたものだ。3メガバンクも同様の取り組みを進めている。

 ベトナム人増加

 背景にあるのが外国人留学生や技能実習生による口座売買の横行だ。生活費を稼ぐため、または帰国時に不要となった給与振込口座を小遣い稼ぎの感覚で転売する人も少なくなく、犯罪集団に流出している。

 最近は特にベトナム人の銀行口座が増加している。警察庁の調査では、不正送金の一時送金先として2018年に把握した562口座のうち、名義人の国籍はベトナムが実に62・8%を占め、日本が14・8%、中国が13・3%と続く。以前は圧倒的に多かった中国人口座とは既に逆転した。

 不正口座は在日ベトナム人がよく利用する会員制交流サイト(SNS)を通じて“流通”している。1口座当たり数万円で取引されるといい、1人で複数の口座をつくって売りさばいていたケースもあった。

 このため、金融業界ではベトナム語や中国語のチラシで「口座の売買は違法です」と呼びかける動きも出ているが、地道な取り組みがどこまで奏功するかは見通せない。

 単純労働の裏口

 「ほとんどの外国人顧客は真面目にやってくれている。(口座を転売してしまう)一部の人たちをどう確認するのかが課題だ」

 他行に先駆けて口座管理を厳格化した北洋銀行(札幌市)の担当者は、こう強調する。昨年10月、在留期間を過ぎた場合は強制解約ができるようにする文言を預金規定に加えが、まだ実際に解約したケースはないという。

 外国人労働者にとって母国への仕送りは生活の一部で、ほとんどは合法的な取引だ。「なぜ口座を作るのか」「給与はどんな会社からいつ入るのか」「いつまで勤めるのか」など開設時に細かく確認し始めたところ、本人確認書類の開示に前向きな顧客が増えるなど好影響が出たという。

 ただ、金融機関だけの対応では限界があるのも事実。技能実習生や外国人留学生が政府が表向き認めてこなかった単純労働の“裏口”になってきたのは公然の事実だ。労働環境の過酷さから失踪する実習生は後を絶たず、犯罪組織に付け入られる隙を生んでいる。

 改正出入国管理法の施行に伴う外国人労働者受け入れ拡大の新制度では、受け入れ先に日本人と同等以上の報酬を求め、仲介業者による搾取や給与不払いを防ぐため記録が残る預金口座への振り込みを義務づけた。口座の不正売買を防ぐには、こうしたルールが形骸化しないよう、業界横断で取り組むことが重要だ。(経済本部 田辺裕晶)

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