前例がない大きな賭けに…混迷極めるルネサス 半導体工場、異例の生産停止へ

【経済インサイド】

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、国内外の13工場で異例の長期生産停止に踏み切った。半導体工場は、24時間365日動かし続けるのが普通で、1カ月の停止となると前代未聞だ。同社は工場の生産稼働率が落ち込む中、生産停止で少しでもコストを切り詰めたい考え。経済環境の悪化によって大量の在庫を抱える事態を避ける狙いもあるが、前例がないだけに大きな賭けとなる。

 「どういう形なら一番効率的なコスト削減が可能か考えていた」

 3月29日に東京都江東区のルネサス本社で行われた記者会見。呉文精社長は、生産停止の動機をそう説明した。

 同社は国内9工場のうち、シリコンウエハーに回路を刻む「前工程」の6工場を、大型連休のある5月と8月を中心に止める方向だ。チップ化して最終製品に仕上げる「後工程」の3工場も9月までに複数回、合計で数週間止めることを想定している。前工程は、第1弾が最長1カ月程度でそれ以降は未定。後工程は合計で数週間となる可能性がある。同社によると、すでに一部工場は4月末から停止しているという。

 同社で生産にたずさわる従業員は7000人程度。そのうち国内が半分を占める。停止中は、雇用関係を維持したまま休ませる一時帰休に踏み切る見通しだ。

 同社は三菱電機と日立製作所の半導体事業を統合したルネサステクノロジに、NEC子会社のNECエレクトロニクスが合流して平成22年に誕生したが、誕生後しばらくは赤字に苦しんだ。25年9月には官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)や自動車メーカーが救済のため出資。22年に4万6000人いた従業員数は現在、リストラで約2万人まで減っている。

 ただ、近年は合理化や事業の選択と集中が奏功して一定の利益が出ており、29年2月に約3600億円、今年3月には約6900億円でそれぞれ米半導体メーカーを買収するなど“攻め”の姿勢もみられていた。それだけに、生産停止が報じられた3月7日の株式市場は驚きを以て受け止め、当日のルネサス株は大きく値下がりした。

 昨年秋以降に目立ち始めた中国の景気減速は、主力製品で自動車や産業機器の制御に使う「マイコン」の販売にも悪影響を及ぼしている。それでも第1四半期(1~3月期)が売上高の底で、第2四半期(4~6月期)に向け回復していくとみているが、問題は7月以降だ。

 米中貿易摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱などもあり先が読めないという。呉社長は「生産一時停止の実施も(先が読めないという)考え方の延長線上にある」と、最悪のケースを意識した対応であることを強調する。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ