個人投資家を増やせ ポイントやメディア活用、証券各社が囲い込みに躍起

 【経済インサイド】

 「貯蓄から投資へ」の資金の流れが滞っている。証券各社はあの手この手で、初心者を投資の世界に呼び込もうと必死だ。すでに投資を行っている個人に対しても、投資家責任の果たし方を“伝授”するなど育成の取り組みが出てきた。個人投資家の人数の拡大と質の向上という両面から、個人の資産形成を後押しする狙いだ。

 Tポイントで購入

 投資初心者向けの取り組みとして注目されているのが、買い物などの日常生活でたまるポイントの活用だ。「投資に関心はあるが元手がない」「損失を出すのが怖い」という人でも、気軽に投資できるのが売りだ。

 SBIネオモバイル証券は4月、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のポイントプログラム「Tポイント」を使って現物株式を購入できるサービスに乗り出した。定額制で、月間売買代金50万円以下の場合は月額200円(税抜き)で何度でも売買できる。

 Tポイントが毎月200ポイント還元されるため、条件によっては実質ゼロ円で上場企業の株主になれる。SBIネオモバイルの小川裕之社長は「日々の生活が資産運用につながる」とアピールする。

 このほか、楽天証券は「楽天スーパーポイント」で投資信託を購入できるサービスが好評だ。昨年9月からは積み立て投資にも対応。同社で初めて投信を購入する人の約8割がポイントを利用しているという。松井証券は信販大手ジャックスと組み、クレジットカード利用でためたポイントで投信が積み立てられるようにした。

 SMBC日興証券は独自媒体の読者に投資を促す取り組みを始めた。インターネット媒体「フロッギー」に2月、株の取引機能を追加し、記事に登場する銘柄を500円から500円単位で購入できるようにした。同社の丸山真志ダイレクトチャネル事業部長は「若年層が投資に向かう構えをなくしたい」と話す。

 AIで支援

 すでに投資をしている人への支援策も充実してきた。個人投資家は株式を買ったものの売るタイミングが分からず「塩漬け」にしていたり、保有銘柄の見直しができていないケースがある。人工知能(AI)やアルゴリズム(計算式)を使って、顧客の価値観やリスク許容度に応じて、保有銘柄の見直しを推奨するサービスが続々と登場している。

 個人投資家を「モノ言う株主」として育成する取り組みも始まった。6月の株主総会シーズンを前に、マネックス証券は5月中旬、個人投資家向けの大型イベントを開き、著名投資家による個別銘柄の株主提案や議決権行使に関する議論を行う予定だ。「モノ言う投資家」を増やすことで、企業の成長を促し、日本株の底上げを図る。

 証券各社が個人投資家の取り込みや育成に力を入れるのは、今も銀行への預金や「タンス預金」として休んでいるお金が多いからだ。

 さらなる戦略を

 日銀の資金循環統計によると、2018年末時点の個人(家計部門)が保有する金融資産の残高は前年末に比べ1・3%減の1830兆円。このうち現預金が占める割合は53・8%に上る一方、株式は9・5%、投信は3・7%にとどまった。

 野村ホールディングスの永井浩二グループCEO(最高経営責任者)は「貯蓄から投資が進まないのは、デフレが長く続いて国民のデフレマインドが抜けないからだ。『インフレになる』と思う人が出てくれば、自然とお金は流れるはずだ」と語る。

 政府は14年に個人投資家のための税制優遇制度「少額投資非課税制度(NISA)」を導入。昨年からは長期積立枠の「つみたてNISA」も始まったが、貯蓄から投資への流れが本格化するには業界を挙げたさらなる戦略が求められている。(経済本部 米沢文)

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