流出仮想通貨、現金化の動き 海外交換所に持ち込み

 仮想通貨交換業者「コインチェック」(東京)から当時のレートで約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した事件で、ハッカー側がネムを資金洗浄して得た仮想通貨「ビットコイン」の一部を海外の仮想通貨交換所に持ち込み、現金化しようとした形跡があることが21日、捜査関係者への取材で分かった。事件は26日で発生から1年を迎えるが、現金化の動きが確認されたのは初めて。警視庁は仮想通貨相場の下落傾向を受けて、現金化を急いだ可能性があるとみている。

 複数の関係者によると、海外の仮想通貨交換所に持ち込まれたのは、現在の相場で数万から数十万円分のビットコイン。買い手があったかは確認されておらず、実際に換金されたかは不明だ。少額の現金化で、事件の動きを追う捜査当局や、サイバー攻撃に対処する「ホワイトハッカー(正義のハッカー)」と呼ばれる技術者、セキュリティー専門家らの出方を探っているとみられる。

 これらのビットコインは、ハッカー側が事件後、サイバー攻撃でコインチェックから盗み取った約580億円相当のネムの大部分を匿名性の高いネット空間「ダークウェブ」で交換したものとされる。当時、ダークウェブ上に開設したサイトで相場より15%ほど割安の提供を持ちかけ、1カ月余りで交換が完了していた。

 ビットコインの現在の相場は流出後の昨年2月上旬と比べて3~4割程度に下落しており、捜査関係者は「仮想通貨の値下がりを警戒して現金化を急いだ可能性がある」と指摘。ハッカー側は今後も現金化の動きを継続する可能性があり、警視庁は国内外の仮想通貨交換所に対して捜査協力を要請し、情報提供を依頼するとみられる。

 ■海外直接捜査権なく 送金を重ね追跡困難

  巨額の仮想通貨「ネム」が流出した事件で、ハッカー側は資金洗浄で手にしていた仮想通貨「ビットコイン」を現金化する動きを見せ始めた。警視庁はビットコインが持ち込まれた交換業者に協力を要請するとみられるが、業者が海外に所在していることがハードルになり、ハッカー側の身元特定につながる情報を得られるかは微妙な情勢だ。

 仮想通貨交換所で取引をする場合には業者に情報を登録する必要がある。警視庁は事件後、現金化のタイミングが「身元特定の手がかりを得られるチャンス」とみて、仮想通貨の動きを追ってきた。

 捜査関係者によると、国内の交換業者であれば、令状による強制捜査などでハッカー側が登録した情報を得るという手段はある。ただ、海外の業者に対する直接の捜査権限はなく、協力を得られるかが捜査の鍵を握ることになる。

 ハッカー側は昨年3月ごろまでに、匿名性の高いネット空間「ダークウェブ」上でネムとビットコインなどを交換。入手したビットコインなどをネット上で口座の役割を果たす複数のアドレスに送金していた。

 少なくとも4アドレスに26億円相当のビットコインを保管したことが確認されており、現金化の動きについて、捜査関係者は「安全な取引方法かを確認する狙いがあるのだろう」との見方を示す。

 一方で、ハッカー側は捜査当局などの追跡を免れようとする動きも見せる。

 情報セキュリティーが専門の筑波大の面(おもて)和成准教授らの共同研究グループによると、昨年12月15日以降、4アドレスのうち、2つのアドレスから数百万のアドレスに計約13億円相当のビットコインが分散送金された。送金取引を重ねることで追跡を困難にする「ミキシング」の手法を使った可能性が高いとみられる。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ