【主張】がん10年生存率 将来見据えた環境整えよ

 平成20年にがんと診断された人を対象とする24万人分の調査で、10年後の生存率が59・4%に上ることが分かった。

 通常、がんの治療成績は5年生存率で判断される。これほど大規模なデータで10年後の姿が示されたのは初めてだ。

 その結果、約6割という数値が出た意味は大きい。がんを患っても、多くの人が治療次第で長生きできる可能性の高さが示された。10年先を十分に考えられるほど、がん治療が進歩している証左でもある。

 当然、患者が10年先を念頭に置いて治療に当たれるよう、世の中の環境を整えていかなければならない。治療を受けながら、変わることなく仕事や生活を続けられるようにすることが肝要である。

 企業はがん治療のための長・短期の休暇取得を容易にするなど治療を受けやすい職場環境を整える必要がある。医療機関も診療時間に柔軟性を持たせてほしい。

 調査結果は、全国で専門的ながん治療を提供する医療機関の患者を対象にしたものだ。国立がん研究センターが集計した。

 もちろん、6割は全体の数値であり、がんのできた場所によって生存率は異なる。前立腺がんや乳がんなどは8~9割と高いが、膵臓(すいぞう)がんや肝細胞がんなどは低く、さらなる治療法の開発を急がなくてはならない。

 ほかにも改善すべき諸課題がある。例えば肝細胞がんの5年生存率は44・7%だが、10年生存率は21・8%と、大きな差が出た。がん治療の大きな節目である5年が過ぎると経過観察が甘くなる傾向はないか。再確認が必要だ。

 発見時の進行度による違いも大きい。大腸がんの場合、早期である「1期」の10年生存率は93・6%だが、別の部位に転移した「4期」では11・6%である。

 検診による早期発見が重要なのだが、新型コロナウイルス禍でがん検診を控えていないか。体調が思わしくないのに医者に行くのを先延ばしにしていないか。改めて自らの健康管理を振り返ることも大切である。

 今回の数値は、10年前の治療成績をみるようなものだ。治療は日々、進歩しており、免疫チェックポイント阻害剤など新しい治療薬も登場した。現在、治療中の患者の不安を少しでも和らげるためにも、この数値を着実に向上させていかなければならない。

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