【話の肖像画】龍谷大学教授・李相哲(61)「首領様が世界に号令」に唖然

 ■「首領様が世界に号令」に唖然

 《1980年。改革開放で発展に向かう中国と入れ替わるように、「文化先進国」だった北朝鮮の輝きが後退していく》

 生まれ故郷、黒竜江省の村にいたときは北朝鮮にも行ってみたいと思っていました。映画に出ている女優とか、音楽に憧れていましたから。

 朝鮮戦争で中国の朝鮮族は北朝鮮と一緒に戦ったので、一時期はルーツだった韓国より北朝鮮との連帯感が強かったかもしれません。村には「革命烈士」(朝鮮戦争中に犠牲になった人)という赤い花がついた額が掛けられていた家もあって、「名誉の戦死」として自慢にしていたような記憶があります。

 しかし大学に入ったころには、威勢のいい表向きの宣伝とは裏腹に、北朝鮮の厳しい経済状況が私たちにも伝わるようになっていました。朝鮮族は北朝鮮に縁故者も多くいて、かなり自由な行き来があったのです。

 ある日のことです。北京の中心部・中南海にほど近い所にある冷麺店に友人と入ったところ、北朝鮮からの留学生が隅っこに座っていました。留学生が苦学していることは知っていたので、同じテーブルに招いたのです。私たちは国民に豊かな生活をさせることができない金日成(キム・イルソン)を遠慮なくののしりました。

 友人の中には文化大革命の悲劇を目の当たりにして、絶対権力者の専横が国民にどれほどの災難をもたらすかを目の当たりにしていた人もいました。

 すると留学生は気色ばんで「わが共和国は首領様がいたから世界最強の国になったのだ。みなさんは南朝鮮反動(韓国)や資本主義のやつらの宣伝ばかり聞いている。わが首領様が世界に号令するという事実を知らないのだ」と言い放つではありませんか。

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