【主張】核のごみ対話活動 地域発展の将来像を語れ

 原子力発電で生じた高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定の第1段階に当たる「文献調査」を受け入れた北海道寿都町と神恵内村に、原子力発電環境整備機構(NUMO)の「交流センター」が3月26日、開設された。

 両町村での文献調査は経済産業省からNUMOへ実施許可が下りた昨年11月から始まっていたが、職員が現地に赴任しての実質的な取り組みは、全国的なコロナ禍の影響で足踏み状態だった。

 町村民とNUMO職員の接点となる拠点のオープンは、地層処分事業への理解を深めてもらう「対話活動」を進める上で必要かつ重要なステップだ。

 既存の研究調査資料を集めて両町村の地質構造や地下資源の分布、過去の地震や噴火の履歴などを多角的に調べる文献調査は、NUMOから受注した専門会社が分担して開始している。

 ガラスで固め、鋼鉄容器に封入するなどした約4万本の高レベル放射性廃棄物を、地下300メートル以深の地下に埋設できる土地が両町村内に存在するかどうかの見当をつけるのが文献調査の目的だ。

 この調査活動と並行してNUMOは、町村民に地層処分事業の内容を伝えたり、文献調査の進捗(しんちょく)状況などを説明したりする「対話活動」に力を入れる。

 対話活動では地域の経済発展ビジョンについても意見を交わす。文献調査に続く概要調査や精密調査を経て地層処分の実施が決まれば、全事業に約100年を要するメガプロジェクトとなる。

 核のごみの地層処分で先行するフィンランドやスウェーデンでも立地点の住民の理解を深めるのに大きな役割を果たした活動だ。

 寿都町と神恵内村の文献調査に鈴木直道北海道知事は否定的な見解を示している。一部の周辺町村でも「核抜き条例」などが可決されているが、両町村で始まる対話活動については、干渉することなく静観してもらいたい。

 核のごみは、半世紀にわたる原子力発電の結果としてたまった。原子力の利便性を享受した現世代に、その後始末の責務があるとする考えは世界の共通認識だ。

 文献調査を受け入れてくれる市町村を国とNUMOが探し始めて約20年の歳月が過ぎている。ようやく芽吹いた理解の若葉を国民全体で大切に育みたい。

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