【主張】ワクチン接種へ 史上最大の作戦に全力を

 新型コロナウイルス感染症のワクチンが日本で初めて承認され、17日から医療従事者への先行接種が始まる。

 今回のワクチンは、米製薬大手のファイザー社製だ。他社製が承認されればそれらも含め、国内の16歳以上の日本人、外国人合わせて1億人余りが高齢者や基礎疾患のある人、一般の人などの順で無料接種の対象となる。

 これほど多くの人々への接種事業は日本の歴史始まって以来だ。政府や自治体、医療機関などの関係者は、円滑かつ迅速な実施に向け全力を尽くしてほしい。

 予防接種法に基づき、妊婦を除く16歳以上の人に接種の「努力義務」がある。強制ではないが、できるだけ多くの人の接種が求められる。それが本人はもちろんのこと、周りの人々、逼迫(ひっぱく)する医療提供体制、ひいては国家、社会を守ることにつながるからだ。

 日本感染症学会理事長の舘田一博東邦大教授は16日の衆院予算委員会で、今回のワクチンについて「データを冷静に見るとかなり効果があるし、副反応も許容の範囲だ」と語った。政府や自治体は接種のメリット、副反応を国民に分かりやすく説明してほしい。

 政府、自治体の新型コロナ対策が後手に回ってきた点を踏まえれば、接種プロジェクトの行方を楽観することはできない。

 日本は欧米諸国と比べ2カ月も開始が遅れた。菅義偉首相は8日の国会で「人種差が想定され、日本人を対象に一定の治験を行う必要がある」と釈明したが、納得できない。ファイザー社は、アジア系も暮らす米国を含む6カ国約4万3千人で治験をしており、それで代えることもできたはずだ。

 特殊な注射器の必要性に気づくのが遅れ、先行接種以降、ファイザー社製ワクチン1瓶当たりの注射回数を6回から5回へ減らす羽目になったのも厚生労働省の大失態だ。貴重なワクチンを無駄にしてしまう。欧州連合(EU)の域外輸出をめぐり、先行接種以降の日本へのワクチン供給の見通しが定かではないのも不安材料だ。

 菅首相は15日、ワクチン接種について「感染対策の決め手」「国家最大の課題」と語った。「全ての国民に安心して接種していただける体制を構築することが国の責務だ」とも語ってきた。その言葉を現実のものとして国民の命と暮らしを守らなければならない。

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