【主張】苦境の新電力 救済は自由化に逆行する

 今冬の電力需給が逼迫(ひっぱく)したのに伴って電力価格が一時急騰し、新電力が苦境に陥っている。

 楽天グループの楽天でんきが新規契約を停止し地方自治体が出資する地域新電力の中には事業停止を決めたところも出てきた。電力自由化で700社近くの新電力が市場参入したが、今後は業界再編も予想される。

 電力自由化を進める経済産業省は契約者への影響を考慮し、新電力の支援に乗り出している。契約者の保護は不可欠だが、それを事業者の救済にまで広げることは自由化の目的に逆行する。

 自社電源を持たない新電力は取引所で電力を調達し、それを契約者に販売している。今回のように価格が高騰すると、経営が成り立たなくなる転売型の事業形態は基盤が脆弱(ぜいじゃく)だ。電力自由化で新規参入を促すだけでなく、今後は撤退ルールも整備する必要がある。

 昨年末から断続的に続いた寒波の影響で電力需給が逼迫し、大手電力の設備使用率は軒並み90%台に上昇した。原発が全面停止していた関西電力や四国電力などの使用率はほぼ上限で張り付き、他社からの緊急融通などで供給を賄う綱渡りの状態だった。

 電力を売買する日本卸電力取引所のスポット価格も一時、1キロワット時あたり250円と通常の25倍程度に高騰した。市場価格に連動する電気料金を設定している新電力の契約者は、料金が大幅に値上がりする恐れがあった。経産省が急激な料金上昇の回避を条件に新電力の支援を決めたのは妥当だ。

 懸念されるのは、契約者保護とは関わりなく、自民党から経営が苦しい新電力の救済を求める声が上がっていることだ。政府内でも過去に遡(さかのぼ)って価格高騰による利益を新電力に還元させようとする動きがある。地域新電力には一定の配慮が必要だが、契約者保護と新電力救済は切り離すべきだ。

 電力自由化は競争を通じて料金を引き下げ、サービスの多様化を促すのが目的だ。大手電力と新電力は激しい競争を繰り広げている。健全な競争環境の整備に向け、取引所の著しい価格変動を抑える仕組みが求められる。

 自由化は電力の安定供給が前提で、新電力にも安定供給の担い手の役割を求めることが重要だ。そのためには不透明な救済に走るのではなく、安定供給に寄与する新電力の育成に力を注ぎたい。

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