【主張】露の毒殺未遂 民主主義への攻撃許すな

 ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が神経剤で襲撃された8月の毒殺未遂事件について、実行したのは露情報・特務機関、連邦保安局(FSB)の秘密チームだったと報じられた。

 定評ある英調査報道サイト「ベリングキャット」などが突き止め、毒殺未遂に加担した化学兵器の専門家や工作員ら8人の氏名や写真も公開した。

 ベリングキャットなどの調査では、ナワリヌイ氏が大統領選出馬を目指していた2017年以降、同氏の出張に30回以上も極秘同行していた者たちの存在が浮上した。調査チームは携帯電話の発信記録などを解析して8人を特定し、その行動から事件に関与したと結論づけた。

 ナワリヌイ氏は8月、出張先から戻る途中の露旅客機内で倒れ、重体となった。西シベリアの病院を経てドイツへ移送され、一命をとりとめた。独研究所や化学兵器禁止機関(OPCW)の分析で神経剤「ノビチョク」系の物質が使われたと判明した。

 ノビチョクは1970~80年代に旧ソ連が開発した化学兵器で民間が製造できる代物ではない。ベリングキャットなどの調査でもプーチン露政権が事件に関与した可能性が指摘されている。

 政権がその疑いを払拭したいのなら、徹底した捜査を行わせ、関係者を処罰するほかない。プーチン大統領らは、事件が「でっちあげ」であるかのような発言を繰り返しており、これでは疑いが深まるばかりである。

 化学兵器で反体制派指導者の抹殺が図られたことに対し、国際社会の批判は強まっている。欧州連合(EU)や英国は露高官らに制裁を発動し、渡航禁止や資産凍結の措置をとった。OPCWの締約国会議では日米欧など56カ国が共同声明で事件を非難した。

 露情報・特務機関がサイバー攻撃などによって民主主義国への工作を強めている現実もある。露機関は2016年の米大統領選に干渉したほか、最近になって発覚した米政府機関への大規模なサイバー攻撃でも関与を疑われている。民主主義への攻撃という点では毒殺未遂と通底する。

 露情報・特務機関の暗躍やプーチン政権の増長を食い止める上でも、日本は対露制裁の発動を含む厳しい姿勢でナワリヌイ氏の事件に向き合う必要がある。

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