【主張】英EUの合意 世界の安定目指し協調を

 英国と欧州連合(EU)による貿易で、関税ゼロを維持することなどを定めた自由貿易協定(FTA)の交渉が合意に至った。

 決裂すれば、年明けから関税が復活し、新型コロナウイルス禍で悪化した英、EU双方の経済にさらなる打撃を与えかねないところだった。

 現地に進出する日本企業にも影響が及ぶ懸念があっただけに、土壇場で双方が譲歩し、混迷に終止符を打ったことを歓迎したい。

 英国のEU離脱をめぐり、2016年の英国民投票から4年半続いた英・EU間の交渉は、これですべて決着したことになる。

 英国とEUには今後、このFTAなどを基盤に良好な協調関係を維持、発展させてもらいたい。

 英国は今年1月末にEUを離脱した。さらに年内は、激変緩和の移行期間とされ、従来通りに関税ゼロの貿易や人・モノの自由な移動が認められてきた。

 FTA交渉は、移行期間を終えた後の双方の将来的な関係を定めるためのものである。3月から交渉してきたが、英国の排他的経済水域(EEZ)での漁業権などをめぐって対立した。

 最終的には5年半の移行期間を設けてEU側の漁獲量を25%削減し、その後再交渉することになった。企業の公平な競争を保つため、環境や労働などの規制に反した場合に報復関税を課せることでも合意した。EUが求めたEU司法裁判所管轄の直接的なEU規制から離れ、新たに独立した枠組みを導入することで落ち着いた。

 英国側は、EU離脱で目指した自国の主権が尊重される内容になったとしている。ジョンソン英首相は「われわれの運命や法律の主権を取り戻した」と語った。

 英国とEUが協力すべきなのは貿易にとどまらない。気候変動やエネルギー、安全保障など、あらゆる面で連携することは双方のみならず世界にとっても有益だ。

 コロナ禍のもとでも拡張主義的な行動を止めない中国やロシアに対抗するためにも、英国とEUの良好な関係は重要である。

 日本企業の欧州事業にとって英・EU間で関税が復活する最悪の事態が回避されたのは大きい。ただし、通関作業が必要で物流が停滞したり、新たに原産地証明が求められたりして影響が出る。英・EU双方に円滑な企業活動が保てるよう柔軟に対応してほしい。

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