【主張】吉川氏が議員辞職 政府は疑惑解明に責任を

 業者からの現金供与を受けた疑惑がある元農林水産相の吉川貴盛衆院議員が議員辞職した。辞職理由は「体調不良」で、疑惑については何も語っていない。

 政治家には説明責任がある。しかも吉川氏の現金受領疑惑は、安倍晋三政権の農水相在任時に、その職務に関わる請託との関係が疑われている。

 自らの説明責任を全く果たさぬまま吉川氏が政界を去る事態は、当時の官房長官であり、後継内閣を引き継いだ菅義偉首相にも批判の矛先を向かわせる。

 「桜を見る会」の問題で東京地検特捜部の事情聴取を受けた安倍氏の疑惑とともに、対応を誤れば菅政権は国民の信を失う。両氏には、説得力ある真摯(しんし)な説明を求めるべきである。

 吉川氏には農水相在任中の一昨年から昨年にかけ、大臣室などで鶏卵生産大手「アキタフーズ」元代表から計500万円の現金を受け取っていた疑いがある。

 元代表は鶏卵業界に有利な政策を実現してもらうため、吉川氏らに働きかけていた。

 吉川氏は疑惑が発覚すると不整脈などを訴えて入院し、党の役職を辞任した。この際も辞任理由は「健康上の理由」だった。

 元代表をめぐっては、元農水相の西川公也氏も現金数百万円を受領した疑いがもたれている。

 西川氏は平成26年9月に農水相に就任したが、国の補助金交付先からの政治献金問題で辞任した。29年10月の衆院選で落選後に当時の安倍首相から内閣官房参与に任命され、菅政権に引き継がれていた。西川氏も疑惑発覚とともに参与を辞任したが、理由は「一身上の都合」とするのみだった。

 加藤勝信官房長官は22日、吉川氏の辞職をめぐり「一般論として政治家は自らの行動について説明責任を果たす対応が求められる」と述べた。

 自民党の二階俊博幹事長は「体調のこととはいえ、大変残念なことで、手術の成功をお祈りしている」と述べ、安倍氏の聴取と吉川氏の議員辞職が政権運営に与える影響を問われると、「全くないとはいえない」と語った。

 これは一般論ではなく、政権の要職にあった元農水相の個別の濃厚な疑惑である。政権運営に大きな影響を与えると覚悟し、農水省をはじめとする政府が率先して解明に当たるべきである。

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