【主張】来年度予算案 財政悪化の現実忘れるな

 政府が一般会計総額106兆6千億円の令和3年度予算案を閣議決定した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2年度当初予算より4兆円近くも膨らみ、9年連続で過去最高を更新した。

 2年度予算についても、15日に閣議決定した3次補正まで含めると、175兆円を超える尋常ならざる規模まで膨らんだ。

 これだけの予算をつぎ込むのである。菅義偉政権は、感染拡大の阻止はもちろん、経済再生を成し遂げることに重大な責任を負うことを厳しく認識してほしい。

 当初予算と3次補正を一体で編成する15カ月予算とした。当面のコロナ対策は主として補正で手当てし、当初予算には使途が決まっていない予備費5兆円を盛り込んだ。高齢化で膨張を続ける社会保障費も過去最大を更新した。

 薬価改定で実勢価格の下落を反映させるなど、予算膨張を抑制する取り組みもある。だが、総じていえば、歳出の急増を賄うのに有効な、新しい財源を見いだす工夫はほとんど見受けられない。

 そこに財政規律はあるのか。予算編成過程では、脱炭素化の研究開発を支援する2兆円基金や、大学の研究基盤を強化する10兆円規模のファンド創設など、破格といえる事業も認められた。

 政策目的は妥当でも基金などの運営が適正でなければ、壮大な無駄を生みかねない。政府の裁量で使うことができる予備費も同様である。支出の際には、その効果を厳しく見極めるよう求めたい。

 看過できないのは、コロナ禍が収束した後の財政のありようについて全く道筋を描けていないことだ。危機に際し財政の力強い後押しが必要なのは当然としても、極度に悪化した財政の現実から目をそらすことは許されない。

 このままでは、令和7年度の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標の達成も絶望的だろう。経済環境が激変する中で財政をどう立て直すのか。この点について菅首相は明確に語るべきである。

 国の歳出はリーマン・ショックで一気に拡大した後も元の水準に戻ることはなく、景気回復が続く中でも増加の一途をたどった。その中でのコロナ禍である。

 いったん膨らんだ予算を元に戻すのは難しいのが現実だ。だからこそ、平時に戻ったときの具体的な対応について、国民に明示する必要がある。

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