【主張】無形文化遺産 日本の匠の技を千年先へ

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に、日本古来の木造建築を支える匠(たくみ)の技の登録が決まった。

 歴史的な建物を修理して守る「伝統建築工匠(こうしょう)の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」である。和食や和紙などに続き国内22件目で、決定が伝えられると各地の技術保存団体で喜びの声が上がった。励みとなるよう期待したい。

 無形文化遺産は、口承で人から人に伝えられる芸能や祭礼行事、伝統工芸技術といった形のない文化を登録し保護するものである。今回は屋根瓦や檜皮葺(ひわだぶき)、建造物の彩色や漆塗りに、畳、建具の製作といった内装も含めた17の技術が盛り込まれた。

 こうした技術は古代以来、職人から職人へと受け継がれ、工夫を重ねて発展してきた。扱うのは木や草、土などの自然素材で、定期的な修理修復は不可欠である。

 特筆すべきは、檜皮葺のための「檜皮採取」や、漆塗りに必要な漆を採る「日本産漆生産・精製」といった、資材を確保する裏方の技も含まれていることだ。

 漆の資源を守りつつ採取する知恵も受け継がれ、まさに持続可能な社会をめざす世界の流れにふさわしい技術といえよう。

 技が生かされるのは飛鳥時代に建てられた奈良・法隆寺に代表される歴史的な木造建築物の修理や保全においてだ。ユネスコの世界文化遺産に登録されている京都の清水寺や金閣寺の屋根も檜皮葺である。平成28年の熊本地震で被災した熊本城の復興など、近年相次ぐ自然災害で被害を受けた建物の復旧にも欠かせない。

 その評価について委員会は「熟練の職人が、伝統的な技能の知識を継承する後継者として、弟子たちを育成してきた」と称賛した。ただし、近代化のなかでそのプロセスはより困難になってきているとも指摘している。

 国も技術保護の重要性は認識している。17分野はすべて国の選定保存技術に選ばれ、日本伝統建築技術保存会(大阪)など14の保存団体を認定している。

 それでも後継者の育成は難しい課題だ。鍵を握るのは「日本人の文化的アイデンティティーを強化するという社会的な役割がある」とする委員会の指摘だろう。

 千年も昔の伝統を守り伝える仕事はやがて千年先の未来に届く。その意義を子供らに伝えたい。

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