【主張】睡眠剤混入 信用の失墜は一瞬である

 福井県の製薬会社「小林化工」の爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤が混入した問題で、健康被害が広がっている。

 70代女性、80代男性の2人が亡くなり、意識障害などの健康被害の報告は150件を超えた。車などを運転中の事故も20件に上っている。

 事故原因が明らかになるにつれ、そのずさんさにはあきれ返るばかりだ。

 混入は担当者が製造過程で誤った原料を継ぎ足したことによる。2つの原料容器は形状が全く異なり、なぜ間違えたかは不明だ。厚生労働省が承認した製造手順では継ぎ足し作業そのものが認められていない。

 同社の規定でも作業は2人での確認が必要とされているが、担当者は1人で作業していた。出荷前の品質検査で異物混入を示すデータを検出していたが、見過ごされて出荷していた。

 信じ難いミス、不正、怠慢が複合的に重なったもので、これが同社の製造現場の常態であったのではないか、疑わざるを得ない。

 同社が会員の日本ジェネリック(後発)製薬協会の佐藤岳幸理事長は「本当に遺憾。信頼回復に向けて初心に戻り、各社に法令順守の徹底を求めたい」と述べた。

 ジェネリック医薬品とは、厚労省の認可を得て製造され、新薬と同等の効き目が保証されたものだ。研究開発費を伴わないため比較的安価で流通する。

 患者の負担低減や医療財政の改善につながるとして、政府も利用を促進してきた。

 「安かろう悪かろう」の風評を覆して信頼を得るため業界全体で取り組んできた結果、今年9月時点で政府目標の80%に近い78・3%まで使用割合を拡大させた。

 だがそうして得た信用も、一つの事故で逆風にさらされ、いともたやすく水泡に帰す。

 厚労省と業界団体は一丸となって各社の管理体制を再確認し、教育を徹底させてほしい。

 「信用を獲得するには長い年月を要し、これを失墜するのは一瞬である。そして信用は金銭では買うことはできない」

 これは昭和30年、集団食中毒を発生させた当時の雪印乳業社長が全従業員に向けて涙で語った訓示の一節である。

 食品や薬品製造にとどまらず、全てのメーカー、企業人が胸に刻むべき金言だろう。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ