【主張】広がる農水省疑惑 不信払拭へ政府自ら動け

 農林水産行政とは、金で動く世界なのか。

 そう思われても仕方あるまい。当の農水省や政府に、そうした疑念を晴らそうという気概がみえない。まずは自ら調査を徹底し、公表すべきではないか。

 鶏卵生産大手「アキタフーズ」のグループ元代表が吉川貴盛元農水相に現金500万円を提供した疑惑に続き、元農水相で内閣官房参与の西川公也氏も現金数百万円を受領した疑いがもたれている。

 西川氏は参与を辞任した。加藤勝信官房長官によれば理由は「一身上の都合」であるという。疑惑発覚とともに入院した吉川氏と同様、疑惑について何ら説明責任を果たさないままだ。

 西川氏は平成26年9月に農水相に就任したが、国の補助金交付先からの政治献金問題が浮上し、在任半年足らずで辞任した。29年10月の衆院選で落選したが、直後に安倍晋三前首相から内閣官房参与に任命された。現職議員ではないが、参与は非常勤の国家公務員であり、政府の一員である。

 西川氏は現金授受の疑いの他、元代表から元農水官僚らとともに豪華クルーザーで接待を受けていたことも判明している。

 衆参両院の農林水産委員会の閉会中審査で行われた関連質疑で野上浩太郎農水相は「捜査活動に関わる」として具体的答弁を拒み、元同省幹部が接待を受けていたとする指摘に農水省は「調査を行っていない」と回答した。

 「捜査中」は答弁拒否のお墨付きとはなり得ない。農水省は、調査すべきである。

 鶏卵業界は、家畜を快適な環境で飼育すべきだとする「アニマルウェルフェア」の国際基準に反発していた。元代表は農水相当時の吉川氏に善処を求める要望書を提出し、西川氏も同席した。結果として日本の鶏卵業界が反発していた部分の義務化は、国際基準から見送られた。

 吉川氏らの働きかけがなくても義務化の阻止は既定路線で、結果に影響は及ぼさなかったとの見方もある。そうであるなら、平たくいえば「やらずぶったくり」ではないか。当事者と農水省、内閣官房の説明が必要である。

 吉川、西川両氏は安倍内閣の農水相であり、当時の官房長官は菅義偉首相だった。この問題を放置すれば政治不信を募らせ、政権への信頼を失うことになる。

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