【主張】北方領土の要塞化 共同経済活動を中止せよ

 ロシアが北方領土の択捉島に高性能の地対空ミサイルシステム「S300V4」を配備した。不法占拠する北方領土を軍事要塞化しようとの動きであり、断じて容認することはできない。

 プーチン露政権に北方領土交渉を進めるつもりがないことは明白で、菅義偉政権は対露姿勢を根本から見直すべきである。

 ロシアが配備したS300V4は航空機や弾道ミサイルの迎撃能力を持ち、最大射程は400キロとされる。北海道東部の上空も射程内に収めることになる。

 ロシアは2016年、地対艦ミサイル「バスチオン」を択捉島に、「バル」を国後島に配備し、対艦戦力を向上させた。択捉島に18年から新鋭戦闘機「スホイ35」を常駐させているのに続き、S300V4の配備で対空能力を強化する狙いだ。

 プーチン政権が軍備増強を急ぐのは、北方領土の軍事的価値をますます重視しているためだ。北方領土がオホーツク海の出入り口にあたり、冬でも凍らない海峡を擁していることが大きい。

 オホーツク海では米国本土を射程に入れる弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)が常時活動しており、対米関係の悪化を背景に海峡を握っておく重要性が増している。海峡が、発展の見込まれる北極海航路へ出るルートにあたるという事情もある。

 むろん北方四島は日本固有の領土であり、ロシアの身勝手な論理は通用しない。加藤勝信官房長官はS300V4配備について「わが国の立場と相いれず、受け入れられない」と述べた。日本政府が外交ルートでロシアに抗議したのは当然で、それで済まされるべき話ではない。

 安倍晋三前政権は、ロシアとの経済協力を領土問題解決につなげる対露方針をとった。北方領土での共同経済活動に関する協議も進めた。こうした取り組みは何ら成果を生まず、逆にロシアを増長させるだけだった。

 ロシアが不法な軍事要塞化を進める島々で共同経済活動とは悪い冗談であり、北方領土の返還につながらないのは明らかだ。共同経済活動の協議は中止し、軍備増強は日露関係を悪化させるだけだと認識させねばならない。

 ロシアに訴えるべきは、北方四島の返還こそが日露の経済協力に道を開くということである。

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