【主張】75歳以上の医療費 能力に応じた負担を促せ

 一定の所得がある高齢者が、医療機関の窓口で支払う負担を増やすための制度改革が政府・与党内で議論されている。

 75歳以上の後期高齢者を対象に、所得に応じて現行の1割負担を2割へと引き上げるものだ。

 高齢者に痛みを強いる改革である。だが、高齢化で医療費が膨張する一方、制度を支える現役世代の人口が減る厳しい現実もある。

 年齢や働いているかどうかにかかわらず、支払い能力に応じて負担を増やすことを考えざるを得ない。痛みはあっても、子や孫の世代に制度を引き継いでいくために、今からなすべき改革だと理解したい。

 政府の全世代型社会保障検討会議が昨年まとめた中間報告に基づく改革である。厚生労働省は2割負担を求める高齢者の線引きについて、単身の年収が「155万円以上」から「240万円以上」まで段階的に5案を示した。

 対象者が最も多くなる「155万円以上」の層は、住民税を負担する能力がある高齢者である。該当するのは約605万人で、現在、例外的に現役世代と同じ3割を負担している人と合わせると、75歳以上の44%を占める。

 与党には、対象者を多くすることに慎重な声がある。自民党の専門委員会は先の会合で、所得上位20%を上限にすべきだとの意見が大勢を占めたという。これは「240万円以上」に相当する。

 世論の反発を意識し、できるだけ対象者を減らそうとする政治的な動きは今後、さらに強まるかもしれない。だが、大切なのは、制度の持続可能性をいかに高められるかである。将来を見据えた責任のある議論を強く求めたい。

 無論、負担が重くなりすぎて高齢者が受診をためらう事態は避けなくてはならない。厚労省は疾患別負担額を試算し、増加幅に上限を設ける激変緩和策を示した。安心して医療サービスを受け続けられるよう、きめ細かく制度を設計しなくてはならない。

 全世代型社会保障検討会議が中間報告で求めた実施時期は令和4年度だ。これは団塊の世代が後期高齢期に入る時期である。加えてコロナ禍に伴う現役世代の労働環境の悪化は、支え合いで成り立つ社会保障制度にも悪影響を及ぼしかねない。こうした状況に適切に対処できるよう、政府・与党内の議論をさらに深めてほしい。

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