【主張】ミャンマー 中国の浸透阻む民主化を

 インドシナ半島西部のミャンマーは、日米などが提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想にとって地理的な要に位置する。同構想推進のため、半世紀以上軍事政権が続いたこの国に民主主義を根付かせる意義は大きい。

 今月上旬、民政移管後2度目の総選挙があり、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる与党、国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を獲得し、軍人枠の議席を勘案しても単独過半数を制した。

 スー・チー氏の5年間の政権運営への審判だった。少数民族武装勢力との和平など重要公約が未達成であることから苦戦が予想されたが、逆に議席を増やした。

 スー・チー氏の個人的人気もさることながら、国民の強権政治復活への拒否感が要因だろう。軍政の流れをくむ野党、連邦団結発展党(USDP)は前回を下回り、わずかな議席にとどまった。

 軍事政権下のミャンマーでは言論は徹底して封じられ、人材が海外へ流出した。欧米諸国から経済制裁を科され、急速な経済発展を遂げたタイなど多くの東南アジア諸国に大きな差をつけられた。

 民主化定着への最大の障害となっているのは、軍人に議席の4分の1を割り当てるなどした軍政時代に制定された憲法である。選挙結果を受け、軍は改正に真摯(しんし)に向き合わねばならない。

 約70万人が難民化したイスラム教徒ロヒンギャへの対応で、スー・チー氏は欧米諸国から批判されている。弾圧されながら民主化を訴えてきた経験を持つスー・チー氏は、ロヒンギャ問題を解決するとともに、少数民族武装勢力との和平を講じ、統一した民主ミャンマーをつくってもらいたい。

 ミャンマーはインド洋に面し、内陸部で中国と接している。中国から見れば、インド洋への出口であり、両国が進める「中国・ミャンマー経済回廊」は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を構成している。中国は孤立した軍政時代のミャンマーに手を差し伸べ、今もロヒンギャへの対応をめぐり「内政問題」と擁護している。中国が浸透し、ミャンマーが強権政治の陣営に入ってはいけない。

 日本政府はNLD政権を支え、民主化と少数民族との和解を促していくべきだ。同時に軍に対し、政治から距離を置くよう求めていく必要もある。

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