【主張】急速な感染拡大 強い危機感を政策で示せ 「Go To」の一部停止も

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。低温低湿の冬場に深刻化することは、当初から懸念されていた。しかも本格的な冬の到来はこれからだ。政府も国民も一層の警戒を必要とする。

 東京都では19日、新たに報告された新型コロナの感染者が過去最多の534人となった。北海道でも266人を数え、全国でも最多記録を更新した。

 留意すべきは、夏の流行期に夜の街や若年層に感染が集中したのに対し、今回は家庭や職場での感染が目立ち、重症化のリスクが高いとされる65歳以上の高齢者の割合が増えていることだ。

 ◆医療現場の悲鳴に耳を

 救いは重症者や死者の数が比較的低く抑えられていることだが、これは医療従事者の奮闘に支えられた数字とみるべきだろう。その意味で、最も恐れるべきは、医療体制の崩壊である。

 日本医師会の中川俊男会長は18日の会見で、医療提供体制について「東京都、北海道は逼迫(ひっぱく)している。その他の地域も、間もなく逼迫するだろうとの連絡が入っている」と述べた。医療現場の悲鳴と受け止めるべきである。

 東京都は19日、感染状況に関する警戒度を最高レベルの「感染が拡大していると思われる」に引き上げた。「急速な感染拡大の局面を迎えた」とする専門家の状況判断が語られた。

 北海道は、新型コロナ感染者が利用可能な病床のうち、17日時点で7割超の病床が埋まったと明らかにした。道は近く病床数を17日時点の963床から76床増やし、1039床とする方針だが、感染拡大のペースがこのまま続けば、すぐにまた足りなくなる。

 大阪府は18日、自粛要請の基準「大阪モデル」で重症病床使用率が35%に達した。吉村洋文知事は「70%近くになる手前で(非常事態の)赤信号を出すかもしれない」と述べた。

 重症患者の治療に使う人工心肺装置「ECMO(エクモ)」などの普及を支援する「ECMOネット」によると、11月1日時点の装置の使用は全国で131件だったが、17日は197件に上ったという。医療現場は「逼迫」の状態に近づきつつある。

 こうした医療現場や地方の声が着実に政府に届いているか。はなはだ不安になるのは、国の観光支援事業「Go To トラベル」に対する意識の乖離(かいり)である。

 日本医師会の中川会長は18日の会見で、今週末を「秋の我慢の3連休としてほしい」と呼びかけ、「Go To トラベル」に関して「(感染拡大の)きっかけになったことは間違いない」と言及した。中川氏は19日にも自民党の感染症対策本部のヒアリングに呼ばれ「国が(移動を)推進することで国民が完全に緩んでいる」と述べた。

 これは事実だろう。ウイルスは自ら移動することはできず、人の移動に伴い感染範囲を広げる。

 だが加藤勝信官房長官は「県をまたぐ移動の自粛を一律に要請する状況ではない」「基本的考え方に何ら変更ない」として「Go To」事業の継続を表明した。マスクの着用、手洗いの徹底、3密の回避で感染防止と事業継続の両立が図れるとの立場だ。

 一方で北海道は、札幌市で不要不急の外出や、道内の他地域との往来を自粛するよう要請している。道内の移動が制限されている地域に、国の事業で観光に向かうことは矛盾しないのか。

 菅義偉首相は「最大限の警戒状況にある」と強調した上で、改めて国民に3密回避など基本的な感染対策を徹底するよう協力を求めた。専門家から飲食を通じた感染リスクの指摘もあったとして、飲食時も会話の際はマスクを着用する「静かなマスク会食」もお願いした。

 ◆個人努力に依拠するな

 努力しよう。国民は十分に頑張っている。来日した国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、欧米より感染者数が抑えられている国内の現状を「日本の方々の規律正しい姿が違いを生んでいる」と述べた。これは日本の美質であり、誇りである。

 ただし、一人一人の感染防止策には限界がある。政府や首長には今、強い言葉と政策でコロナと対峙(たいじ)することが求められる。アナウンス効果も含め、感染拡大地域での「Go To」の事業停止も選択肢である。

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