【主張】拉致と米新政権 北朝鮮に徹底的な圧力を

 横田めぐみさんは昭和52年11月15日、新潟市の中学校から帰宅途中、北朝鮮の工作員に拉致された。前夜には父、滋さんの誕生日を祝い、こげ茶色のくしを贈っていた。幸せだった家族は以来、つらく長い戦いの日々を送ってきた。

 15日で、あれから43年となる。東京五輪の年の10月に生まれ、13歳の可憐(かれん)な少女だっためぐみさんは、56歳となっている。プレゼントされたくしを大事に持っていた滋さんは、今年6月、87歳で亡くなった。この理不尽な年月に、何としても終止符を打たなくてはならない。

 菅義偉首相は12日、米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領と電話会談を行い、拉致問題について「菅政権の最重要課題だ。理解と協力をお願いしたい」と呼びかけた。バイデン氏の返答は明らかになっていない。

 トランプ大統領は拉致被害者の家族と面会を繰り返し、金正恩朝鮮労働党委員長との2度の首脳会談では拉致問題に言及した。自身の在任中の解決を悲願とした安倍晋三前首相との結束も固く、被害者家族の期待も大きかった。大統領選の結果には、失望もある。

 一方でトランプ政権は2度の首脳会談を経て、北朝鮮への圧力を弱めていた。米韓合同軍事演習を延期し、北朝鮮の短距離弾道ミサイルの発射を黙認した。圧力を弱めれば北朝鮮は動かない。

 バイデン氏は選挙戦を通じ、北朝鮮と金正恩氏に厳しい言葉を投げかけ続けてきた。所属する民主党は伝統的に人権問題に厳しい。バイデン氏の政権が北朝鮮への圧力を徹底すれば、それは拉致解決への好機となり得る。

 かつてブッシュ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」に指定し、「悪の枢軸」と名指しした強力な圧力を背景に、小泉純一郎元首相が訪朝して5人の拉致被害者の帰国に結び付けた。その歴史に学ばなくてはならない。

 拉致被害者の全員帰国を果たすことは日本政府の責務である。菅首相自ら金正恩氏と直接談判する以外に問題解決の道はない。

 ただしその実現には、同盟国米国の軍事的、経済的圧力の助けを必要とする。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権は「戦略的忍耐」と称して北朝鮮問題を放置した。その愚を繰り返さぬためにも日米首脳間の緊密な意思の疎通が望まれる。

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