【主張】香港の議員剥奪 民主主義否定する暴挙だ

 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会の決定に基づき、香港立法会(議会)の民主派議員4人が議員資格を剥奪された。

 香港市民の直接投票で選ばれた議員を当局が一方的にクビにできる新たな制度の導入であり、6月末に施行された香港国家安全維持法(国安法)に続く、中国による民主主義への重大な挑戦である。暴挙に歯止めをかけるには、国際社会が監視の目を強めるしかない。

 全人代常務委は議員資格を失う行為として、「香港独立」の主張を宣伝・支持することや、国家の安全を損なうこと、中国や香港に「忠誠」を尽くさないことなどを挙げた。中国や香港政府を批判しただけで「不忠者」の烙印(らくいん)を押され、議員職を失う。これでは、立法、行政、司法が互いに牽制(けんせい)し合って権力の乱用を防ぎ、市民の権利と自由を守る「三権分立」は崩壊したに等しい。

 中国の習近平体制は三権分立を認めておらず、香港の中国化が一段と進んだことになる。

 中国は、1997年の香港返還に際し、香港の高度な自治と、資本主義体制の50年存続を国際社会に保証した。国際公約を無視する恥知らずな行為といえる。

 議員資格剥奪に抗議するため、他の民主派議員15人が辞表を提出した。立法会は今後、残りの現職議員43人のうち親中派が41人を占める事実上の翼賛議会となる。来年9月に延期された立法会選挙に向けて、親中派が有利になるような法整備が進むのは確実だ。

 国安法を補完する「国家安全条例」の制定に向けた動きが始まる可能性もある。民主派が立法会から退場した今、国際社会による監視はより重要度を増している。

 議員資格を剥奪された4人は民主派の中でも穏健グループに属する議員たちだ。香港の直接統治を進める習指導部は、いかなる批判も許さないという強硬な立場を明確に打ち出したといえる。

 ポンペオ米国務長官は「中国の卑しむべき義務違反を非難するため、世界中の同盟・友好国と行動を続ける」と声明を出した。英政府は駐英中国大使を呼び出して「深い懸念」を伝えた。日本では加藤勝信官房長官が「重大な懸念を強め、状況を注視している」などと従来の発言を繰り返したのみだ。いかにも物足りない。もっと強く中国を非難すべきだ。

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