【主張】クマ大量出没 古里の守りに犬の活用を

 本州の各地でツキノワグマの出没が目立っている。クマが山中で主食にするコナラやミズナラ、ブナなどの堅果類(ドングリ)の実りが今年は全国的に悪いのが直接的な原因だ。

 腹をすかせたクマたちが食物を求めて人里へ下りてきて、人との遭遇で事故を起こす。

 環境省によると今年4月から9月までの出没は1万3670件にも上り、過去5年間の同時期で最も多い「大量出没年」である。

 ツキノワグマの分布域は濃淡差があるものの本州全域と四国に広がっている。ドングリの凶作地域では早朝の遊歩道の通行などに特に気を付けることが必要だ。

 クマは意外なほど身近な所で気付かれないまま、人間と時間差行動をしていることが多いので、鉢合わせのリスクを避けたい。今年10月には新潟と秋田県で各1人の死者が出ている。

 クマの出没が増え始めたのは、年間捕獲数の平均が約2300頭となった1970年代からだ。それ以前の50年代、60年代の年平均は千頭、1300頭だった。昨年度の捕獲数は5千頭台に乗り、今年度は9月までの上半期で4千頭台に迫るまでになっている。

 こうしたクマの個体数増加の背景には人間社会の変容がある。まずは薪炭から石油・ガスへのエネルギーの転換だ。70年代にはコナラなどの用途がなくなり、里山の樹林の放置が始まった。

 その結果、クマの生息域とドングリの供給力が拡大したが、クマが増えた状態で、凶作によるドングリ不足が起きると山はクマの収容力を失ってしまうのだ。

 山麓部に位置する中山間地の人口減少と耕作放棄地の増加も影響している。廃村で残された柿や栗などの果樹の味を覚えたクマは人里への距離を縮める。ハンターの高齢化と減少もクマの増加に一役買う結果となっている。

 クマの出没増加には複数の要因が関係しているので解決は容易でない。木質燃料で二酸化炭素の排出実質ゼロと、林業の復興を目指すバイオマス発電も良策だが、普及には年月がかかる。

 即効性が期待できるのは、犬の力の活用だろう。長野県の軽井沢町では町から委託を受けたNPO法人がクマを追い払う訓練を受けたベアドッグを使って人とクマとの共存関係を構築中だ。各地での応用と展開が望まれる。

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