【主張】バイデン氏勝利 強固な日米同盟の確認を 「分断」の克服に期待したい

 米大統領選は、民主党のバイデン前副大統領が当選に必要な選挙人の過半数を得て勝利宣言した。来年1月20日に就任の運びだ。

 バイデン氏は「分断ではなく、統合を目指す大統領になることを誓う」と述べた。「米国は世界の灯台であり、模範となって世界を導く」とも強調した。

 時宜を得た決意表明といえる。国内の対立、分断を克服しなければ米国は内政でも外交でも前へ進めないからだ。

 新型コロナウイルス禍への対応をめぐる激しい非難合戦や黒人差別への抗議行動の広がりで、米国社会の分断は深まった。

 そのうえ、共和党の現職、トランプ大統領が大統領選の敗北を認めない異例の事態となった。

 ≪中国に毅然と向き合え≫

 民主主義に基づく米国政治は曲折があっても最終的に機能することを示すべきだ。多少の時間はかかっても米国民は新しい大統領のもと団結してもらいたい。

 トランプ政権は外交、通商から気候変動対策、医療保険制度に至るまで、オバマ前政権の施策の多くを否定してきた。

 そのオバマ政権で副大統領を務めたのがバイデン氏だ。バイデン新政権が政策転換を基調とするのは必至であり、日本として注意深く見守っていく必要がある。

 ただし、バイデン氏にはトランプ政権が打ち出した中国への厳しい姿勢を維持してほしい。覇権を目指す中国の習近平政権に対し、トランプ政権が対決姿勢で臨んだことを踏まえるべきである。

 中国は、法の支配や自由、民主主義を踏みにじる「現状変更勢力」の大国である。国際法を無視して南シナ海の大半に主権が及ぶと強弁し、人工島を造成して軍事化を進めている。東シナ海の尖閣諸島(沖縄県)を奪おうと挑発を重ねている。

 巨大経済圏構想「一帯一路」は巨額のインフラ開発投資でアジアやアフリカの途上国を「債務の罠(わな)」に陥れるなど、中国の影響力拡大を図るものだ。

 このような中国への疑問や反感は米国民の多くが共有している。選挙戦では両陣営が対中強硬姿勢を競い合った。ウイグルや香港の人々に対する弾圧への批判はバイデン氏の方が激しかった。

 その一方でバイデン氏は、気候変動対策など世界規模の課題で「中国の協力は必要」とも強調してきた。中国に付け込まれる隙はないか。

 国際ルールを無視した振る舞いや人権弾圧を続ける限り、中国はまっとうな協力の相手とはなりえないことをバイデン氏は自覚してもらいたい。

 「米国第一」のトランプ氏に対し、バイデン氏は国際協調重視を掲げている。だがそれは、無原則に誰とでも仲良くすることではないはずだ。

 ≪TPP参加を促す時だ≫

 日本や欧州諸国など、米国と法の支配や自由などの価値を共有する国々と連携し、「現状変更勢力」の国々から公正な国際秩序を守る必要がある。バイデン氏には先頭に立ってもらいたい。

 「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づく日本、オーストラリア、インドとの4カ国の枠組みは、その典型となる。この輪を東南アジア諸国や欧州諸国などに広げていきたい。

 非核化をめぐる米朝交渉は膠着(こうちゃく)状態にあるが、北朝鮮の核開発を事実上黙認したオバマ政権当時の「戦略的忍耐」に戻ってはならない。圧力路線を堅持し、核・弾道ミサイルの放棄を迫るべきだ。日本人拉致問題の解決にも軍事面を含む米国の圧力が欠かせない。

 菅義偉首相はツイッターでバイデン氏に祝意を示し、日米同盟強化とインド太平洋地域の平和と繁栄のため「共に取り組みたい」とのメッセージを送った。

 コロナ禍のさなかだが、菅首相はバイデン氏との電話協議の設定はもとより、できるだけ早期に会うことで信頼関係を築くべきである。対中認識をすり合わせることが喫緊の課題となる。

 バイデン氏は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)については再交渉の上での復帰を示唆している。菅政権は米国の参加を促すべきである。

 トランプ氏は法廷で徹底抗戦する構えだ。泥沼の混乱に陥ることは望ましくない。訴訟はきちんとした証拠を伴うものでなくてはならない。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ