【主張】読書週間 ひもとけば心の免疫にも

 人が生きていくのに読書はやはり必要だ。コロナ禍によって経験したことのない日常が続く中でそんな思いを新たにした人は多いだろう。知識を得る、空想に遊ぶ、不安を和らげる。本にはさまざまな効能がある。

 読書週間(11月9日まで)が始まった。今年の標語は「ラストページまで駆け抜けて」だ。

 全国出版協会・出版科学研究所が発表した今年上半期(1~6月)の出版市場の推定販売金額(紙と電子の合算)は、前年と比べて2.6%増えた。「巣ごもり」で本に向かう人の数も、読書の時間自体も増えたのだろう。

 紙は2.9%の減少だった。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出され、多くの書店が休業した影響だ。分野別では、学校の一斉休校で家庭学習のニーズが高まり、児童書や学習参考書などに特需が生まれたという。

 自粛期間に利用者が増えた電子出版は3割近く伸びた。書店の休業や図書館の閉鎖を受けてのことだろう。漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」のヒットで電子コミックが好調だったほか、これまで作品を電子化していなかった人気作家、東野圭吾氏らが解禁に動いたことなども背景にある。

 興味深いのはウイルスに関係する書籍がよく売れたことだ。

 例えばカミュの「ペスト」はさまざまな立場の民衆が伝染病に立ち向かう小説だ。人はわが身に降りかかるかもしれない危機に直面すると、先人の経験や知恵を学ぼうとする。小説であれノンフィクションであれ、本はよいテキストだ。読むことで頭の中で病を疑似体験し「心の免疫」を得ようとしているようにもみえる。

 日本財団が全国の17~19歳の男女千人を対象にした調査で、コロナ禍での読書量の変化を聞くと、全体の4人に1人が「増えた」と答えた。読書が好きな人は6割近くに上ったが、「全く読まない」という人も3割を超えた。

 情報を取得する際に、テレビやSNSに比べて読書は能動的な態度が必要になる。

 専門家は「本を読むという行為自体が主体性の強化になっている。教育現場ではますます必要とされるのではないか」とコメントしている。

 人生は短く本は多い、と辛口コラムニストの山本夏彦翁はいった。本を読もう。

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