【主張】所信表明演説 国家観示し指導力発揮を

 菅義偉首相が就任後初めて国会で演説し、「新型コロナウイルスの感染拡大と戦後最大の経済の落ち込みという国難」の中で国の舵(かじ)取りを担っていく覚悟を表明した。

 2050年までに国内の温室効果ガス排出を全体としてゼロにすると宣言した。行政の縦割りや既得権益を打破し、規制改革を進めることも約束した。

 意欲的に政策を語ったが国家観にかかわる大局的な問題があまり語られなかったのは残念だった。その一つが中国問題である。

 経済・軍事的に台頭した中国とそれに危機感を覚えた米国の対立によって国際情勢は厳しさを増している。このようなとき日本の首相は、外交・安全保障上の針路を正面から語るべきである。

 演説では「中国との安定した関係」が極めて重要だとし、主張すべき点は主張すると語った。

 だが、中国は尖閣諸島(沖縄県)をねらうなど日中関係は正常な状態にはない。自由と民主主義を掲げる台湾と中国の関係も悪化の一途をたどっている。中国共産党政権による香港やウイグルの人々への人権弾圧も深刻だ。

 これらについて、菅首相はどう考えているのか。

 演説で語った日米同盟重視と「自由で開かれたインド太平洋の実現」は、中国の拡張主義を念頭に置いているのだろう。それでも、もっと明確な国際情勢認識と政策を国民と国会議員に説く必要があるのではないか。

 首相が「厳しい安全保障環境の中、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の最も重大な責務だ」と語り、「イージス・アショアの代替策や抑止力の強化」の方策をまとめると表明したのは妥当だ。

 ただ、中国海警局公船が長期にわたり徘徊(はいかい)や領海へ侵入している尖閣問題への言及はなかった。南西方面の島と海と空を守り抜く具体的な決意を聞きたかった。国会で必ず語るべきだ。

 日本学術会議の会員任命問題は取り上げなかったが、従来の形式的な任命から方向転換した理由や、同会議が軍事科学研究を忌避する声明を出して安全保障の充実を妨げてきた問題を改革するのかどうか、今後考えを聞きたい。

 憲法改正をめぐって首相は、国会の憲法審査会での建設的議論を促した。首相自身も改正すべき点を積極的に語ってもらいたい。

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