【主張】中国の「抗米援朝」 平和への脅威はどちらだ

 中国の朝鮮戦争参戦70周年を機に、習近平政権が、米国を敵に回して戦った当時のスローガン「抗米援朝」を大々的に宣伝している。

 米国に対抗し、北朝鮮を支援する-との掛け声だが、今も似た光景を呈している点を憂慮せざるを得ない。

 北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉に進展がない現状で、中朝両国が対米連携を強めることには警戒が必要である。

 中国軍の朝鮮戦争参戦は1950年10月25日だ。韓国を助けた米軍主体の国連軍と北朝鮮側の中国軍は激しい戦いを繰り広げた。

 北京では23日、参戦70年を記念する式典が開かれ、習国家主席が「(米国などの)帝国主義の侵略を食い止め、新中国の安全や、アジアと世界の平和を守った」と強調した。

 何を言っているのか。朝鮮戦争を仕掛けたのは北朝鮮であり、それに加勢したのは中国やソ連である。当時の国連安全保障理事会決議は北朝鮮の南侵を「平和の破壊」と明確に位置づけている。

 習政権は最近、朝鮮戦争をテーマにしたテレビドラマを次々と放送させている。国営新華社通信は論評記事で、当時の精神を受け継ぎ「あらゆる強大な敵に必ず打ち勝つ」と宣伝した。

 国際ルールを顧みず、覇権追求を強める習政権は、米国をはじめとする自由や法の支配を重んじる国々から批判されている。中国国民の愛国心を刺激して結束を強めようとするのは平和的ではないし、建設的でもない。

 北朝鮮の核・弾道ミサイル戦力は、東アジアと世界の平和と安全にとって深刻な脅威になっている。にもかかわらず、習政権は金正恩朝鮮労働党委員長の独裁体制を擁護し、対北制裁に消極的だ。正面から北朝鮮に非核化を迫らない中国の責任は大きい。

 北朝鮮は経済制裁、新型コロナウイルス禍、洪水被害の三重苦にある。経済的に抜き差しならなくなっている。

 北朝鮮が苦境を脱する道は核・ミサイル戦力を放棄し、日本人拉致問題を解決する以外にあり得ない。米国との交渉に真摯(しんし)に取り組むべきなのに、中国の後押しが北朝鮮の翻意を阻んでいる。

 米国の対中圧力を分散するために北朝鮮を盾にするような習政権の態度は平和を乱すばかりだ。直ちに改めなくてはならない。

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