【主張】露の毒殺未遂事件 「国家犯罪」へ制裁実施を

 ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏をめぐる8月の毒殺未遂事件で、欧州連合(EU)と英国は、ボルトニコフ連邦保安局(FSB)長官ら露政府高官6人と1化学研究機関に、渡航禁止や資産凍結などの制裁を科した。

 独立した国際機関である化学兵器禁止機関(OPCW)が、ドイツに搬送されて治療を受けたナワリヌイ氏の血液から、ノビチョク系の神経剤を検出したと発表していた。これに先立ち、ドイツやフランスなどもノビチョク系神経剤を検出したとして、ロシアを非難していた。

 プーチン露大統領の強権統治のもとで、反体制派の人々が毒物などで襲撃されながら真相は闇に葬られてきた。EUと英国が制裁発動でプーチン政権の暴挙を許さない姿勢を示したのは当然だ。

 米国も、人権侵害にビザ発給禁止や資産凍結を科すマグニツキー法による制裁を検討している。

 プーチン政権は毒殺未遂事件への関与を否定し、制裁に反発している。だが、ナワリヌイ氏毒殺未遂はロシアの「国家犯罪」の疑いが極めて高い。

 サリンよりも殺傷力が強いとされるノビチョクは、ソ連が1970~80年代に開発した。ロシアも加盟する化学兵器禁止条約の規制対象となっている。

 高度な施設と専門知識を持つ国家でなければ製造できない。プーチン政権の意志が働かなければ準備も使用もできない。

 2018年には英国内で、亡命者として暮らしていた元露情報機関員とその娘がノビチョクで襲撃され、意識不明の重体となった。英国は露軍参謀本部情報総局(GRU)の組織的犯行と断定し、英米独仏など29カ国が、153人の露外交官を追放するなど制裁措置をとった。

 だがこの時、安倍晋三前政権は先進7カ国(G7)で唯一、対露制裁を見送ってしまった。

 今回の毒殺未遂事件では、茂木敏充外相も加わった9月のG7外相声明が、ロシア政府に犯人の処罰を求めた。

 にもかかわらず、今回の事件をめぐり、菅義偉政権が対露制裁をしていないのはおかしい。化学兵器の使用は絶対に許されない。北方領土交渉を理由に及び腰になれば、ロシアに侮られるだけである。菅政権はEUや英国と連帯し制裁に踏み切るべきだ。

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