【主張】ナゴルノ紛争 停戦維持し和平に道筋を

 南カフカス地方の旧ソ連構成国、アゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノカラバフ紛争が9月末に再燃し、500人近くの死者を出した。

 ロシアの仲介で10日からの停戦合意にこぎつけたが、なお予断を許さない情勢だ。停戦を定着させて人道危機を終わらせ、和平の歩みを進めなければならない。

 係争地のナゴルノカラバフは、アゼルバイジャン西部に位置する人口約15万人の自治州だ。キリスト教徒のアルメニア人が多数派の地域だが、ソ連時代の1923年にイスラム教シーア派主体のアゼルバイジャンに組み込まれた。

 当時、独裁権力を確立しつつあったスターリンが、アルメニア人を分断し、民族結束による反乱を封じようとした。このことがソ連末期に民族衝突の火を噴いた。

 ナゴルノカラバフでは80年代後半にアルメニアへの編入を求める動きが強まり、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争に発展した。94年の停戦までに3万人以上の死者を出した。

 アゼルバイジャンは豊富な石油・天然ガス資源を擁し、国土でも人口でもアルメニアを大きく凌駕(りょうが)する。紛争でアルメニア側がナゴルノカラバフの実効支配を確立したのは、ロシアの軍事支援によるところが大きかった。

 アゼルバイジャンは自民族の祖先こそがナゴルノカラバフの先住者だとし、ナゴルノカラバフを「失地」とみなしている。

 露仏米を議長国とする欧州安保協力機構(OSCE)の「ミンスク・グループ」が和平を仲介してきたが、協議は停滞し、問題は未解決のままだ。

 ソ連の盟主だったロシアの責任は重い。ロシアはアルメニアと軍事同盟を結ぶ一方、アゼルバイジャンにも武器を輸出してきた。場当たり的な対応はやめ、根本的な和平の道筋を示すべきだ。

 今回の衝突が激化した背景には、トルコが民族的に近いアゼルバイジャンを後押ししたこともある。アルメニア側は、トルコが戦力を投入したと批判した。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国であり、ロシアとの直接衝突を誘発しかねない行動は慎まなくてはならない。

 コロナ禍に伴う国民の不満を外部に向けようという力が働きやすい時期だ。国際社会が知恵を絞って紛争再燃を防ぎたい。

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