【主張】核のごみ文献調査 決断した町と村に敬意を

 北海道寿都町が原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定プロセスの入り口に当たる文献調査への応募を決めた。近隣の神恵内村も調査への請願を採択した。

 数万年間、放射能を持ち続ける核のごみを、地下深くに埋めて安全に隔離する最終処分法が制定されてから20年を経ての本格的な動きである。寿都町と神恵内村の決断に敬意を表したい。

 約2年間をかける文献調査は、受け入れた自治体内で、第2段階の「概要調査」の適地(数キロ四方)を探すことが目的だ。

 文献調査では、地域の既存の地質研究資料や文献をNUMO(原子力発電環境整備機構)などが分析し、住民に地区の地下構造をはじめとする地質情報の提供が行われる。ボーリングはしない。

 寿都町と神恵内村では今後、詳しい地質情報をもとに、町や村全体で地元での核のごみの最終処分についての議論が深められることになる。その取り組みを静かに見守りたい。8日未明の寿都町長宅への放火などはもっての外だ。

 文献調査が最終処分場の建設に直結しないことを全国民が知っておくことも大切だ。

 順調に進めば寿都町と神恵内村は、2年後に次の概要調査への判断時期を迎えるが、その際には知事の意見も尊重される。

 自治体の長や知事の反対があれば概要調査には進めない。最終処分法で定められていることだ。また地元の判断で選定プロセスをキャンセルできるのも核のごみの最終処分事業の特徴である。

 文献調査が始まるとNUMOの職員が現地に駐在し、住民や地元産業界との「対話の場」を設けて生の声を聞く。地域の持続的経済発展に向けた長期ビジョンについても具体的に話し合われる。

 文献調査を受け入れた市町村には最大20億円が交付される。大都市に代表される原子力発電の受益地と、その後始末を引き受けようという地方との公平性を考えれば、当然の対価であろう。

 核のごみの最終処分は、先送りを繰り返して済ませられる問題ではない。日本海に面した北海道の2町村による文献調査への決断を、全国的な関心喚起と理解の深化につなぎたい。

 本州や九州、四国からも手が挙がり、複数地域で文献調査と議論が進むのが理想の形である。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ