【主張】反政府デモ拡大 「タイ式」を変えるときだ

 タイで学生ら若者を中心とする反政府デモが拡大を続けている。先月の集会には、2014年のクーデターで軍事政権が発足して以降、最大の5万人が参加した。収束の気配は見えない。

 デモの参加者は、プラユット政権の退陣と議会の解散・総選挙、憲法改正を要求している。つまるところ、軍政以降の強権政治に対する反発、反対である。

 プラユット政権が強引に押さえ込もうとして、対決ムードが高まることが懸念される。抗議の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 昨年、民政移管に向けた総選挙が実施されたが、政権を託されたのは、クーデター当事者で軍政トップのプラユット氏だった。

 軍政下で定められた現憲法で、軍が実質的に首相を選ぶことになったためだ。名ばかりの民政移管に不満は少なくない。求められたのは強権との決別だった。

 今年2月、軍の政治介入を批判し、若者らに人気のあった野党が解党に追い込まれたのがデモの発端だ。コロナ禍で下火になったが、7月中旬ごろ再燃した。

 プラユット首相は対決回避も模索し、憲法改正要求には応じる姿勢を見せるが、議会が手続きで手間取り、「時間稼ぎ」という批判も出ている。

 問題は、新規のコロナ感染者が少ないのに、非常事態宣言の延長が繰り返されていることだ。首相は集会の禁止やメディア検閲の権限を手にしている。

 注目すべきは、王室改革を求める声の高まりだ。若者らは「不敬罪」の廃止や王室の権限縮小を求めている。かつてのタイでは考えられなかったことだ。

 4年前に亡くなったプミポン前国王は70年間在位し、ときに政治混乱に直接介入して事態を収拾する「調停者」として存在した。もはや、王室の権威をたのむ時代ではないということだろう。

 軍がクーデターで混乱をリセットする手法も終わりにしなければならない。独自の「タイ式民主主義」を変えるときだ。

 タイには多くの日本企業が進出している。コロナ禍で痛手を受けた経済が、デモの混乱でさらに悪化しないか心配だ。

 タイは今世紀に2度のクーデターがあり、デモと衝突が繰り返された。プラユット政権と若者らの双方が、この現実を重く受け止め、行動すべきである。

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