【主張】ドイツ再統一30年 自由の旗手として行動を

 冷戦時代に分断されていたドイツの再統一から30年を迎えた。

 自由民主主義の西ドイツが、ソ連の衛星国だった共産主義の東ドイツを吸収した。同じ民族を東西に隔てていた「ベルリンの壁」が1989年11月に崩壊してから、1年足らずで成し遂げられたのである。

 その原動力は、圧制に長く苦しみ、自由と民主主義を希求した東独国民の強い思いと、これに応えた西独国民だった。共産勢力が強いた全体主義よりも、民主主義や自由、人権、法の支配を尊重する価値観が選ばれた。ドイツは今、繁栄している。

 今にいたる歩みは平坦(へいたん)ではなかった。旧東独のインフラ整備など統一コストがのしかかり、2000年代半ばまでは「欧州の病人」といわれた。

 それでもドイツは労働分野の構造改革などにより経済を復調させ、欧州連合(EU)域内で最大の経済力と人口を持つ基軸国となった。近年では、欧州各国を揺るがした中東、北アフリカからの難民を積極的に受け入れた。人道・人権を重視する姿勢は、ドイツの特徴となっている。

 そのようなドイツであるからこそ、世界に対して一層の役割を果たしてほしいことがある。

 具体的には、メルケル政権のもとで中国との経済関係重視に偏ってきた外交姿勢を明確に転換し、全体主義の中国の覇権志向を抑えるよう動くことである。

 中国共産党政権はウイグル、チベットなどの人々に深刻な人権侵害を続けている。国家安全維持法の施行で香港から自由と民主主義を奪った。南シナ海などでは軍事力を背景に国際法を無視して強引な海洋進出をしている。欧米企業からの技術の強制移転など通商でも国際ルールを破っている。

 ドイツが掲げる価値観とは相いれない行動ばかりだ。ドイツにとって中国は最大の貿易相手国であるとはいえ、容認していいわけはあるまい。

 幸いなことに、ドイツの政策転換は始まっている。メルケル政権は9月2日、インド太平洋に関する外交政策指針を決定し、「法の支配」や「航行の自由」重視を打ち出した。マース独外相は同指針をEUへ拡大する意欲を示している。ドイツは自由を掲げる大国として、中国の反発を恐れずに影響力を行使してもらいたい。

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