【主張】菅政権と中国 高まる脅威を直視せよ 国賓来日の白紙撤回が必要だ

 菅義偉首相が日本の平和と独立、繁栄のため決断すべきことがある。ことなかれ主義のような対中融和姿勢からの転換である。

 自民党の二階俊博幹事長は菅内閣発足翌日の講演で、「中国とは長い冬の時代もあったが、今や誰が考えても春を迎えている」と語った。

 信じがたい発言だ。

 日中関係が良好だと考える国民はほとんどいないのではないか。菅首相誕生に役割を果たした実力者とはいえ、二階氏のような認識を菅首相や政府は共有してはならない。もし考えを同じくするなら、日本の安全保障を大きく損なう事態といえる。

 ≪どこが春の関係なのか≫

 中国の傍若無人な振る舞いは、容認しがたいことばかりだ。

 日本固有の領土である尖閣諸島を奪おうとしている。中国海警局の公船は尖閣海域を徘徊(はいかい)し、領海侵入も数えきれない。軍の姿を隠した侵略行為である。靖国神社参拝への内政干渉や邦人の不当な拘束も見過ごせない。

 自由と民主主義を掲げる台湾を目の敵にし、海空軍やミサイルで威嚇している。南シナ海では国際法を無視して人工島の軍事拠点化を進め、中距離弾道ミサイルなどを発射した。

 新疆ウイグル自治区では100万人以上を強制収容所へ送ったといわれている。国家安全維持法の施行で香港から自由と民主主義を奪った。チベットや内モンゴル自治区でも弾圧を重ねている。

 新型コロナウイルスをめぐっては、中国政府による情報隠蔽(いんぺい)、情報公開の遅れがパンデミック(世界的な大流行)を招いたと指摘されるが非を認めない。

 経済が低迷しても中国の国防費はうなぎ上りで今年は前年比6・6%増の約19兆1000億円だ。核戦力強化にも余念がない。

 米国企業からの強制的な技術移転など知的財産権侵害や、サイバー攻撃による科学技術情報や軍事機密の窃取が疑われている。巨大経済圏構想「一帯一路」は途上国を「債務の罠(わな)」に陥れると警戒されている。

 菅首相と政府が国の独立と国民の自由と生命、領土・領海・領空を守る義務を果たすには、このような厳しい現実を直視しなくてはならない。そのうえで外交努力や防衛力増強、日米同盟の抑止力向上に努めるべきである。

 習近平中国国家主席は菅首相の就任に祝電を打った。国家元首である国家主席が、そうではない首相に祝電を送るのは異例だが、実のない友好ムードに乗せられてはいけない。習政権が狙うのは日米同盟の弱体化だからだ。

 激化する米中対立は冷戦終結以来、30年ぶりの国際情勢の大変動だ。同盟とは本来、抑止の対象とする大国を想定するものだが、ソ連崩壊で明確な対象を失った日米同盟は、今や中国と向き合うことになった。河野太郎前防衛相が在任中の9日、「中国は安全保障上の脅威」と指摘したことがそれを示している。そうであれば整合性ある外交が必要だ。

 ≪日米分断策には警戒を≫

 米国は中国の覇権主義を抑え込もうと英国やオーストラリア、カナダなどと立ち上がっている。インドや、仏独両国なども対中融和姿勢を改めようとしている。

 一方、菅首相は自民党総裁選で米中両国との関係について「二者択一ではない」と語った。だが、中国問題から逃避することはもはや許されない。双方にいい顔をする「コウモリ外交」はいずれ破綻するだろう。日本は、価値観を同じくする同盟国米国と連携すべきだ。ただし、米国に追随するだけの「状況対応」もいけない。日本は中国問題を自らの生存に関わる課題と位置づけ、同盟国や友好国と協力して取り組むべきだ。

 経済力に引き寄せられて過度に対中依存を高める危うさは、コロナ禍でさらに明瞭になった。全体主義の中国は経済と軍事を結び付けて覇権を追求する。経済だけをみてすり寄るのは誤りである。

 延期された習主席の国賓来日問題の扱いは焦点となる。二階氏は講演で「穏やかな雰囲気」での実現を求めたが、中国が根本から態度を改めない限り認めがたい。

 天皇陛下がもてなされる国賓に深刻な人権弾圧の責任者の習主席はふさわしくない。世界から日本の道義と品格が疑われ、国益を損なう。菅首相は国賓来日の白紙撤回に踏み切ってもらいたい。

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