【主張】JR終電繰り上げ 鉄道離れ加速させかねぬ

 JR西日本と東日本が最終電車の発車時刻を30分ほど繰り上げる方針を打ち出した。両社とも線路の保守・点検などに充てる時間を確保することを目的としているが、新型コロナウイルスの感染拡大で深夜帯の利用者が大きく減少していることも響いている。

 安全運行のため、徹底した保守・点検は欠かせない。ただ社会インフラである鉄道の終電繰り上げは、多方面で影響が大きい。鉄道利用者の利便性を極力損なうことなく、慎重に検討を進めてもらいたい。

 両社は来年春のダイヤ改正で終電の繰り上げを実施する計画だという。乗り継ぎの変更などで利用者に対する周知徹底も図らねばならないのは当然である。

 JR西は、近畿圏の在来線12路線で終電の発車時刻を来春から最大で30分繰り上げるダイヤを発表した。大阪環状線や京都線などで午前0時以降に主要駅を発車する列車を中心にして運行本数を削減する予定だ。

 JR東でも東京駅から100キロ圏内の路線で終電時刻を繰り上げる。来月にも路線ごとの繰り上げ時間を公表するが、一部路線では始発時間も遅くする。同社はピーク時間をずらして利用した人に提供するポイント制の導入も検討している。

 終電から始発までの時間を長く取ることで、線路保守などの工事時間を確保する。両社では高齢化に伴って保守作業員が減少しており、効率的な作業態勢を構築する狙いがあると説明する。

 だが、終電時間が繰り上がれば主要駅近くの飲食店などの売り上げに影響が出かねない。深夜帯に働く人の移動手段が確保しにくくなるという問題もある。私鉄との接続にも配慮が必要だ。

 政府の「働き方改革」で残業時間が厳しく制限され、コロナ禍の影響も加わって終電近くの利用者が減少しているのは事実だ。こうした傾向は今後も続くとみられ、利用実態に適した柔軟なダイヤ編成は、鉄道会社にとって大きな課題といえよう。

 それでも終電を繰り上げる場合には、終電前の運行本数を増やして車内混雑を回避するなどの取り組みが求められる。

 利用者に対する丁寧な説明を含めて理解を求める姿勢を欠けば、コロナ禍で広がった鉄道離れを加速させかねない。

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