【主張】少子化と菅政権 若い出産に安心感つくれ

 少子化は国難だ。これを克服するためには、子供を安心して産み、育てられる社会をつくらねばならない。

 菅義偉首相は、少子化に立ち向かう新たな施策として、不妊治療への保険適用を掲げた。

 多額の費用負担を減らすと同時に、治療希望者に対する医療機関の質の担保をいかに図るか。これ自体は検討されるべき課題である。

 だが、少子化対策の新たな施策としては物足りない。問題が矮小(わいしょう)化されていないか。

 対症療法も大事だが、構造的な問題に迫り、改善すべきは改善するのが政治の役割だ。菅氏にはその大きな指針を示してほしい。

 令和元年の出生数は、過去最少を更新し、初めて90万人を下回った。合計特殊出生率は1・36で東京は全国最低の1・15である。少子化対策に関する菅氏の発言からは、深刻な事態を変えるという意気込みが伝わってこない。

 少子化が進む原因は、結婚年齢が上がる「晩婚化」と、出産年齢が上がる「晩産化」だと分析されている。出産時期が遅れれば、それだけ持てる子供の数が減る。夫婦が高齢化すると、医学的には妊娠しにくくなる。

 それが、不妊治療が増える大きな原因でもある。治療にあたる産婦人科医の間では、もう少し若いうちに子供を持つことを考えてほしい、というのが共通認識だ。

 女性の7割が働く時代だ。この時代に欠かせないのは、働き始めて間もなく子供を産んでも歓迎され、あたりまえに職場に戻り、キャリアを積んでいける、という信頼と安心感をつくることだ。

 夫婦がそう確信できなければ、若いうちは仕事に全力を傾け、子供を持つのは職場の理解や評価を得てからにしようと考える。

 しかも、現実にはやっと子供を持てたとしても、預ける先もままならないのである。

 認可保育所や認定こども園などに入所を希望しても入れない待機児童は、今年4月時点で約1万2千人に上った。国は今年度末までに「待機児童ゼロ」を実現するはずだったが困難な見通しだ。この実現も喫緊の課題だ。

 子供が欲しいという夫婦の願いにつけこんで、治療が目的化するようなことがあってはならない。何より重要なのは夫婦の気持ちに伴走することだ。治療には丁寧なカウンセリングも欠かせない。

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