【主張】中国の外交攻勢 欧州取り込みは失敗した

 習近平国家主席が出席した中国と欧州連合(EU)とのオンライン形式での首脳会談で、EU側から香港情勢や新疆ウイグル自治区での人権問題に懸念が表明された。

 習氏は「内政に干渉することに断固反対する」と述べ、「中国は人権問題の『先生』を受け入れない」と反発した。

 EUのミシェル大統領は、南シナ海問題にも言及し、一方的行動を慎むよう求めた。投資協定の年内合意のめどは立たなかった。

 米国との対立激化を受け、中国は、王毅国務委員兼外相と楊潔●政治局員の外交の2トップを、事前に送り込んで欧州の取り込みを試みたが、失敗に終わった。

 相手の意見に耳を貸さないのだから当然である。自由や民主主義は、EUの根幹をなす理念だ。これらを素通りして接近を図っても、違いが際立つだけである。

 もとより、少数民族や反体制派の弾圧は絶対に認められない。国際公約である香港の「一国二制度」は尊重すべきであり、南シナ海における中国の領有権の主張は仲裁裁判所が退けている。

 こうした問題を他国と向き合い話し合えば、中国の立場は正当化できない。自らもそう認識しているのではないか。はなから議論を拒否する居丈高な態度は、相手に良い印象を与えるはずもない。

 王氏は8月下旬から、新型コロナウイルス流行後初の外遊として、フランス、ドイツを含む欧州5カ国を訪問した。楊氏は9月、ギリシャとスペインを訪れた。中国外交の2トップが続けて同じ地域へ足を運ぶのは異例である。

 中国はオーストラリアやインドとも関係が険悪化している。欧州に活路を見いだそうと、「米国第一」に対抗する「国際協調」を旗印に、経済連携をテコに外交攻勢をかけた。だが、王氏に対しても、訪問先で人権問題などでの懸念表明が相次いだ。

 王氏の最大の失態は、ドイツでの記者会見で、チェコの上院議長らの台湾訪問に「一線を越えた」と報復を示唆したことだ。同じEUメンバー国に対する公の場での恫喝(どうかつ)である。独仏などの大きな反発を招いた。

 主権や領土など中国の主張する「核心的利益」をめぐっては、いかなる状況でも柔軟性を発揮できず、独りよがりの紋切り型の対応しかできない。習氏率いる一党独裁体制の外交の限界だ。

●=簾の广を厂に、兼を虎に

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