【主張】拉致と菅政権 好機を主体的に生み出せ

 菅義偉首相は会見で、拉致問題について「全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、不退転の決意で自ら先頭に立って取り組んでいきたい」と語った。

 拉致問題担当相を兼務する加藤勝信官房長官も小泉純一郎元首相の訪朝から18年を迎えたことについて「具体的な進展がなかったことは本当に忸怩(じくじ)たる思いだ」とし、「国際的な連携を含めてしっかりと解決に向けて取り組みたい」と述べた。

 言葉はいい。その通りに拉致被害者の帰国に向けて、あらゆる手立てを講じてほしい。

 だが、菅首相が自民党総裁として公明党の山口那津男代表と交わした新たな連立政権を樹立する上での合意文書には「拉致問題」解決の文言が盛り込まれなかった。前回衆院選後の政権合意には明記されていた。

 与党関係者は、合意文書で前回の合意を「継承」と明記しており「拉致問題を軽視しているわけではない」と説明したが、これを北朝鮮はどう受け取るか。余計な予断を与える合意文書を交わした真意がわからない。

 新政権が拉致問題への熱意を減じたと判断すれば、決して問題の解決に動くことはない。圧力の徹底で金正恩朝鮮労働党委員長を直接対話の場に引き出すという安倍晋三前政権の企図以外に、拉致被害者を救う道はないはずだ。

 北朝鮮は困窮している。8月の労働党中央委員会総会では金正恩委員長が「計画された国家経済目標の未達成」と「人民の生活が向上していない」ことを認めた。9月の党中央軍事委員会では「経済計画の全面見直し」に言及した。制裁による圧力と国際包囲網の成果であるともいえる。

 混乱は、好機を生む可能性がある。安倍前首相は「冷静な分析の上にあらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動していく考えだ」と述べていた。

 機会は、日本側が主体的に作り出さなくてはならない。そのためにはまず、新政権が拉致問題解決への決意と熱情を北朝鮮に突き付けなくてはならない。

 拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さんは新政権に対し、「一刻も早く被害者全員を救う具体的な動きにつなげていただきたい」と話した。この母の思いにこたえることが政権の、政治の責務である。

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