【主張】菅政権の経済政策 改革に徹し成長の礎築け

 ■コロナ危機克服へ支援万全に

 菅義偉政権が経済政策で果たすべきことは、コロナ禍がもたらした日本経済の危機的な状況を克服し、その後の持続的な成長へと確実につなげることである。

 そのために菅首相は規制改革などを断行する方針を示した。アベノミクスの継承を掲げつつも、その中で力点を置くのは、これまで力不足が指摘されてきた成長戦略や構造改革なのだろう。

 重要なのは、これによってどんな経済社会を築くかだ。それにはまず、首相が目指す将来像を明確にする必要がある。

 その上で中長期的な成長に資する政策を効果的に実施し、経済再生の礎を築いてもらいたい。

 ≪産業の新陳代謝を促せ≫

 菅首相は新内閣発足後の記者会見で、政策運営について「行政の縦割り、既得権益を打ち破って規制改革を進める。国民のために働く内閣を作る」と語った。

 中小企業や地方銀行の再編を促して産業や地方経済の足腰を強くするほか、持論の携帯電話料金引き下げなどに取り組む考えだ。

 首相が継承するアベノミクスは大胆な金融緩和と機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」からなる。このうち金融・財政政策は一時的な需要喚起には有効だが、規制改革などによる成長戦略が不十分なら経済の底上げは図れない。

 これは安倍晋三政権時代の教訓でもある。異次元といわれる金融緩和を実施しても物価上昇率の2%目標は達成できず、国の当初予算の歳出規模が8年連続で過去最大を更新しても低成長から抜け出せなかった。日本経済の潜在成長率は1%程度にすぎない。

 その背景にある大きな要因が成長戦略の遅れである。例年、骨太方針の目玉としてデジタル社会への対応策を掲げながら、コロナ禍でデジタル分野の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈したのはその典型例だろう。

 急ぐべきなのは、産業の構造改革を促し、日本経済の労働生産性を高めることである。そうすることで1人当たりの国内総生産(GDP)が高まれば、人口減少時代でも経済の活力を維持できる。

 菅首相が着目する中小企業政策は、産業基盤強化の布石となり得る。労働者の多数を占める中小・零細企業は総じて生産性が低い。後継者不足に悩む企業の事業承継を促し、産業全体の新陳代謝を活発にできるかが問われよう。

 超低金利時代の収益悪化に苦しむ地方金融機関に経営改革を促す取り組みも、かねて指摘されてきた課題だ。アベノミクスの恩恵は地方や中小企業に行き渡っていない。これを改めるためにも自ら掲げた改革に万全を期すべきだ。

 ≪財政悪化にも目配りを≫

 物足りないのは、携帯料金の引き下げを含めて、官房長官時代からの懸案ばかりということだ。既得権益に切り込み、規制改革を徹底することを看板にするなら、今後、どんな分野で改革を断行すべきかも幅広く示すべきである。当然、やる気を見せるばかりで実を伴わないようでは意味がない。

 小泉純一郎政権の郵政改革や安倍政権の農協改革のように、反発を押し切り改革を断行するには腰を据えた取り組みが必要だ。その覚悟があるのかどうかである。

 一方、菅政権はコロナ禍による経済危機の克服にも全力をあげなければならない。財政政策が果たすべき役割は引き続き大きい。

 秋冬に感染が深刻化して再び経済社会活動が制限されることになれば、経営を維持できなくなる中小・零細企業や個人事業主が相次ぐ可能性がある。それが雇用不安や所得悪化につながれば、影響は深刻かつ長期に及ぶ。

 経営が悪化した企業への給付金支給や、雇用維持の支援といった安全網に万全を期さなくてはならない。当面は予算の予備費でしのげたとしても、足りなくなれば速やかに追加対策と令和2年度第3次補正予算案を編成すべきだ。

 危機克服のためには十分な財政支援を躊躇(ちゅうちょ)してはならない。だからといって急激な財政悪化の放置が許されるわけもなく、いつ、どんな形で財政を立て直すかについても議論を深めておくべきだ。

 菅首相は自民党総裁選の際、消費税率の引き上げについて、安倍氏と同様に今後10年は必要がないという考えを示した。ならばその間の財政運営をどうするのか。その方向性を示すことも、政治指導者としての当然の責務である。

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