【主張】総裁選討論会 対中認識が甘すぎないか

 新型コロナウイルス感染症と並んで、世界を最も悩ませている中国問題についての認識が甘すぎないか。日本記者クラブ主催の自民党総裁選候補者3人による公開討論会への率直な感想だ。

 3人は南シナ海や尖閣諸島、香港などをめぐる中国の行動を問題視したが、論じられた対応策は物足りなかった。「ハイレベルの機会を活用しながら、主張すべき点は主張して一つ一つ懸案を解決していく」(菅義偉官房長官)などとし、中国に注文をつけるという一般論にとどまった。

 中国はそれだけで行動を改めるような生易しい相手ではない。

 3人には、国際情勢をどのようにとらえ、どう対処するかを国民に説明する姿勢が足りない。

 米国は全体主義中国の覇権志向を抑え込もうと動き出した。東西冷戦終結以来およそ30年ぶりの国際情勢の大転換だ。ポンペオ米国務長官は今年7月の演説で、「自由世界が共産主義体制の中国を変えなければ、共産中国が私たちを変えてしまう」と警告し、自由主義諸国が連携して中国の脅威に対抗しようと呼びかけた。

 これに対し、安倍晋三政権は明確な姿勢を示さなかった。だが、11月の米大統領選の結果がどうであれ、ポスト安倍政権がこの問題を素通りできるとは思えない。

 日本のリーダーを目指す3人には、自由と民主主義、法の支配を重んじる立場から、全体主義の中国を抑え込む政策をとると表明してほしかった。

 討論会では、強制収容所送りを伴う新疆ウイグル自治区での人権弾圧への言及はなく、憲法改正や尖閣を守るための防衛力充実の話題も出なかった。

 懸念されるのは菅氏が、石破茂元幹事長のアジア版NATO(北大西洋条約機構)構想を批判する文脈で「米中が対立する中で、反中包囲網にならざるを得ないのではないか」と語った点だ。

 石破氏のアジア版NATO構想は集団的自衛権の行使の問題を乗り越えておらず、「中露を排しない」とする点からも大いに疑問がある。

 だが、菅氏が「反中包囲網」の否定を前提とする発言をしたことで、菅政権が発足すれば、国際社会から今までよりも中国に近い政権と見なされる恐れがある。菅氏は、対中問題で米国と戦略のすり合わせを行うと表明すべきだ。

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