【主張】拉致と総裁選 解決の具体策を熱く競え

 安倍晋三首相は拉致問題の解決を政権の「最重要、最優先課題」とし、辞意表明の会見では、被害者の帰国に結果を出せず「痛恨の極み」と目を潤ませた。

 拉致が「最重要、最優先」の課題であることは後継の政権にとっても同じはずである。自民党総裁選を争う3氏は三様に解決への意欲を語っているが、具体性を欠き、熱を感じない。

 低調な論戦を喜ぶのは北朝鮮だけだ。12日に行われる日本記者クラブ主催の公開討論会などで、解決への道筋をどう描くか、熱い議論を戦わせてほしい。

 菅義偉官房長官は現職の拉致問題担当相でもある。安倍政権での交渉を熟知する立場にもあった。徹底した圧力と国際包囲網により北朝鮮に「拉致問題の解決なしに未来を描くことはできない」と理解させる基本的な戦略に誤りはない。交渉の詳細を表出させることは難しくても、経験の上に立つ今後の方針については、もっと語れるはずだ。

 岸田文雄政調会長は「自らが先頭に立ち、交渉の糸口を探っていく」と意気込みを示した。だが党総裁、首相が先頭に立つのは当然である。先頭に立って何をするのか、具体的に語る必要がある。

 石破茂元幹事長は「東京、平壌で連絡事務所を開設する。それは正式に政府として公式に、責任をもった立場で拉致問題をどのように解決するかということに対応していかねばならないからだ」と述べた。だがこの方策は危うい。

 今年6月、南北歩み寄りを象徴した開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を北朝鮮が一方的に爆破した衝撃映像がその行方を物語っている。北朝鮮を動かせるのは力による圧力だけだ。平成14年に蓮池薫さんら5人の拉致被害者が帰国した背景に、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ米国の圧力があったことを忘れてはならない。

 金正恩朝鮮労働党委員長は総裁選の行方を注視しているはずだ。7年8カ月の長期に及んだ第2次安倍政権は揺るぎなく北朝鮮に圧力をかけ続けた。安倍氏と親交を深めたトランプ米大統領は、2度にわたる首脳会談で直接拉致問題の解決を迫った。

 正恩氏は、次はくみしやすい首相を、と望んでいることだろう。理想は3氏がそれぞれに対北強硬論を戦わせ、誰が継いでも手ごわいと独裁者に思わせることだ。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ